モラトリアム法再々延長しないと約10万社潰れると大前研一氏

NEWSポストセブン / 2013年2月8日 7時0分

 アベノミクスの問題点と日本経済の危険性を、大前研一氏はこれまでもたびたび指摘してきた。大前氏はさらに、安倍政権の足元を揺るがす危険な問題、「モラトリアム法(中小企業金融円滑化法)」期限切れの問題があると指摘する。

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 モラトリアム法は、中小企業などに対する貸し渋り・貸し剥がし対策として2009年12月に施行され、当初は2011年3月末までの時限立法だったが、2度延長されて、今年3月末が終了期限となっている。

 中小企業の経営者や住宅ローンの借り手から返済の一時猶予や金利引き下げなどの相談があった場合、それに応じる努力義務を金融機関に課すとともに、借り手が破綻した場合は貸し倒れの40%を公的に保証する、という内容だ。

 同法の中小企業者向け実行件数は2012年9月末までに累計343万7155件、実行額は同95兆7391億円に達している。なんと日本の国家予算(一般会計)を上回る金額だ。その期限がいよいよ切れるわけで、これはいわば日本版「財政の崖」である。

 麻生太郎財務相は就任直後からモラトリアム法について「再々延長するつもりはない」と明言している。しかし、そうなると膨大な数の中小企業が倒産の危機に直面する。モラトリアム法がなければ早々に倒産していたであろう中小企業が、民主党政権下でデフレ不況が続いていたこの3年間に業績を好転させるのは至難の業である。むしろ大半の企業は経営状態が当時よりも悪化しているだろう。

 同法を利用している企業数は、およそ40万社と推定されている。モラトリアム法が再々延長されなければ、そのうち2~3割、ざっと10万社が約定通りの返済ができずに潰れることも予想されるのだ。

 そうなれば、不良債権を抱えた地域銀行、信用金庫、信用組合などの中小金融機関の経営も悪化する。通常、金融機関の融資先は「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分類され、ランクが下がるに従って融資条件は厳しくなっていく。それと同時に、この六つの区分に対して、銀行は貸倒引当をするよう義務づけられている。

 しかし、モラトリアム法を利用した企業は、「要管理先」や「破綻懸念先」であっても「正常先」として扱われ、貸倒引当をする必要がなくなる。だが、同法が期限切れになって元本や金利の返済を再開したら、「要管理先」や「破綻懸念先」になる(戻る)企業が続出するはずだ。それらに対して、ちゃんと貸倒引当金を積まねばならなくなったら、資本が弱な中小金融機関の財務内容は一気に危険水域に達する。

 仮に、実行額が9600億円程度だったら握り潰せただろう。9兆6000億円でも何とかなったかもしれない。だが、国家予算を超える96兆円はあまりに莫大だ。

※週刊ポスト2013年2月15・22日号



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