米ハリウッド映画 今や中国とインドの出資なしでは作れない

NEWSポストセブン / 2013年2月24日 7時0分

 CGを用いて作る特殊映像、VFX(Visual Effects 視覚効果)は今や、映画やドラマに欠かせない。今年のアカデミー視覚効果賞ノミネート作品を見ると「アメイジング・スパイダーマン」や「ダークナイト ライジング」のように、ひと目で作り物だとわかる空想世界を描いたものがある一方、どこまでが実写なのか区別がつかない「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」のような作品もある。VFXが身近になったことがよくわかる一例だ。

 その「ライフ・オブ・パイ」でVFXを担当したリズム&ヒューズ・スタジオ(R&H)が、アカデミー賞の授賞式を前にして連邦倒産法第11章、日本でいう民事再生法を申請した。1987年に創業し、1995年にアカデミー視覚効果賞を受賞した「ベイブ」をはじめ、「ナルニア国物語」などで生き生きとした動物を描写してきた名門スタジオである。

「堅実に仕事をしている老舗工房だと思っていたのに、そこですら倒産するようでは、僕らの仕事の先行きが不安になりますよ」と業界関係者も驚きを隠さない。

 この数日前には、スピルバーグが創立したドリームワークス・アニメーションが最大500人規模で従業員を削減する可能性があると報じられた。ドリームワークスは報道について何もコメントしていないが、ふたつのニュースを合わせて、アメリカなら安定してVFXの仕事がある時代は本格的に終わりをむかえたのだ、という悲観的な分析も飛び交っている。

 背景には、2000年ごろから米国で問題視されてきた映像製作の空洞化現象が横たわっている。空洞化とは、米国向けに公開・放送された映画・テレビ映画の海外で製作される割合が急増していることを指している。米国以外で製作する理由としては、人件費など単価が安いことと、税制優遇措置があげられている。

 積極的に誘致策をとっているカナダ、英国、オーストラリアに対抗して、米国でもカリフォルニアなどいくつかの州が税制優遇措置をとりいれているが、以前のような隆盛を取り戻せていないのが現実だ。VFXスタジオも同様で、ひと昔前はハリウッドの近くに工房を置くのが有利と言われていたが、映像新聞社の布施悟さんによれば、作業そのものを地理的に近い場所で行う必要はなくなっているという。

「高速ネットワーク環境が整った今では、アーティストやクリエーターが世界のどこにいるかではなく、どんな技術を持っているかで仕事が決まります。また、VFXスタジオは工場を経営するようなもの。大きな仕事のためにコンピュータも人材も常に新しい投資をし、それを続けないと仕事のチャンスをなくす。絶えず仕事と設備投資をしなければ回らないのが実情です。そのため、最近は中国やインドから出資を受けているところが多いですね」

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