元在日韓国人三世 ヘイトスピーチ規制法整備への複雑な思い

NEWSポストセブン / 2013年3月23日 7時0分

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左:安田浩一氏 右:有田芳生氏

3月14日に参議院議員会館で開催された「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」に、約250名が集まった。これは17日にも行われた、新大久保などでの「嫌韓デモ」に抗議し、レイシズム(人種差別)の広まりを押しとどめる意志と行動を表明するために、有田芳生氏をはじめとする11名の議員が呼び掛けたものだった。

この集会に参加した元在日韓国人三世で『韓国のホンネ ~市井の若者から、“韓国ネトウヨ”まで~』の著書(安田浩一氏との共著)があるライターの朴順梨氏がデモやこの集会に対する考えを綴る。

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「朝鮮人は我々先祖の土地を奪った!」

「キムチ臭い!」

2009年12月に、在特会(在日特権を許さない市民の会)を中心とする十数名が京都朝鮮第一初級学校に押しかけ、街宣活動を行った『京都事件』の映像が集会の冒頭で流されると、会場中がしんと静まり返り、彼らの怒号だけが響き渡った。映像を初めて見た私を含め、ほとんどの参加者がやりきれなさから、声も出ない状態に陥っていたことだろう。
 
2007年に設立された在特会の活動は、この事件が起きた2009年にはすでに活発化していた。しかし大手メディアが取り上げることはほとんどなく、昨年あたりからニュースサイトなどで、ちらほらとデモの様子が紹介される程度だった。そしてようやく国会議員が腰をあげたことで、今回初めて集会が開催された。

会ではジャーナリストの安田浩一氏や、一水会最高顧問の鈴木邦男氏による基調報告などが行われたが、なかでも印象的だったのは、龍谷大学法科大学院教授の金尚均氏の発表だった。子供を京都朝鮮第一初級学校に通わせていた“当事者”である金氏は、「ユダヤ人は出ていけ」などの中傷発言に民衆扇動罪が適用されるドイツの刑法を例にあげ、日本でもヘイトスピーチを規制する法を整備できるかについて、熱をこめた口調で語っていた。

 とはいえ正直な話、元在日の私としては法が施行されたとしても「よくやった!」と言えるかは、現時点ではあまり自信がない。

なぜなら法律で取り締まったとしても、デモ参加者や支援者が「特権を持った在日韓国・朝鮮人によって、日本人が虐げられている」「在日韓国・朝鮮人の多くは反日の思想を持っているにもかかわらず、日本に居座り続けている」 と信じる限り、根本的には解決しないからだ。それに「在日が日本の法にまで介入した」という言説が生まれ、ますます怨嗟がつのる可能性だってある。

 しかし特定の相手に対し「死ね」「殺せ」とヘイトスピーチを繰り返す集団を、街中で見たくはない。私が元在日だからということ以上に、どう考えてもおかしな事態だと思うからだ。

そして「これは切実な問題提議で、もう法に頼るしかない状態。在日だけではなく、何年も良心的立場から在特会を見続けて抗ってきた人々の、悲鳴に近い意見です」と、集会に来ていた関西在住の在日男性が語ったように、耳をふさいでやり過ごすことができないほどの悲鳴が、やっと永田町にも届いたのだから。せめてこの1回の集会で終わることがないようにと、今はただそれを願うしかない。

朴順梨(フリーライター・元在日三世)

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