本田靖春さん 酒席で初対面の青年に就職推薦状書いてくれた

NEWSポストセブン / 2013年4月28日 16時0分

 ノンフィクション作家の故・本田靖春さんの全作28作品が電子書籍化され、アマゾンなどで配信が始まった。小説家の作品集の電子書籍化はこれまでもあったが、ノンフィクション作家のものはこれが初めてで、注目を集めている。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

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 本田さんは読売新聞記者として主に社会部で活躍。1971年に独立してノンフィクション作家となり、「不当逮捕」「誘拐」「私戦」など数々のノンフィクション作品を発表してきた。終生借家住まいで「由緒正しい貧乏人」を自称し、晩年は病気から失明、両足を切断するという苦難に見舞われながらも、最後の連載エッセイ「我、拗ね者として生涯を閉ず」を執筆、最終回を前にして2004年、多臓器不全のため71歳の生涯を閉じた。

 死後、本田さんがクローズアップされるのは今回が初めてではない。2010年には河出書房新社が「文藝別冊」として「KAWADE夢ムック 本田靖春」として一冊まるまる本田さん特集のムック本を出している。また創刊90周年特集を組んだ「月刊 文藝春秋」2013年1月号では、編集者の中井勝氏が「誘拐」の舞台裏を紹介している。

《取材をスタートするにあたって、編集部と本田さんとの間で取り決めをした。「一、取材記者に頼らない」「一、カポーティと同じく全取材を筆者一人で完遂すること」。原稿は書き下ろし。(略)いまから考えると、ずいぶん苛酷な条件であったと思う。原稿完成までは収入ゼロ。だが本田さんの決意は固く、昭和五十一年から一年三ヵ月をかけてこの作品-「誘拐」完成に全力投入した》

 ノンフィクション(=ドキュメンタリー)は時代性がポイントであり、それゆえ時代とともに作品も人も忘れ去られる運命から逃れることは難しい。なぜ本田さんとその作品は繰り返し再評価されるのだろうか。「我、拗ね者として……」の担当編集者のひとりであり、今回の電子書籍化も担当した講談社の吉田仁氏はその魅力をこう語る。

「まず文章の佇まいが美しい。ただ調べて書きましたではなくて、文学的であり、読まされてしまう巧みさもあります。またテーマに対する自分のスタンスがしっかりしていてブレない。日本のノンフィクション作品の原点のような存在ではないでしょうか」

 実は私のようなチンピラライターが曲がりなりにも筆一本で国民年金と国民健康保険を25年間払ってこれたのも、本田さんのお陰である。

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