歌舞伎町撮り続ける写真家「ヤクザに隠し撮りがバレた時は」

NEWSポストセブン / 2013年5月26日 16時0分

写真

眠らない街・歌舞伎町で眠る若者

 長年にわたって新宿・歌舞伎町を撮り続けてきたフォトジャーナリスト・梅崎良さんが、その想いを込めたドキュメンタリー「新宿歌舞伎町滅亡記」(左右社)を出した。梅崎さんの歌舞伎町への想いを聞きながら、週末の歌舞伎町の夜を過ごした。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 梅崎さんが歌舞伎町を撮るきっかけは、1999年6月、終電を逃して町でひと晩過ごす羽目になったからだった。本に紹介されている「所持金500円しかないのに、ナンパしまくる男」がいた。

「俺が知っている日本人とは違う人たちがここにいたんだよね。こいつらなんなんだろうって思った」

 それまで中国の天安門事件、雲仙普賢岳の取材をしてきた。雲仙普賢岳では立ち入り禁止区域の向こう側で撮影をして、警察から事情聴取のため出頭を命じられたこともある。

「禁止されたからと言って誰も報道しないのはおかしい。火山を知りたくて禁止区域の向こう側に入ったし、人間を知りたくて歌舞伎町に通った」

 多いときには毎晩8時に歌舞伎町に“出勤”して街をぶらつき、始発で帰宅していたという。とある土曜日の夜、そのころと同じように梅崎さんと歌舞伎町で待ち合わせた。梅崎さんは歌舞伎町に現れると、だいたい30分かけて街をうろつき、ちょっと休憩したり友人たちと談笑して時間をつぶし、また30分かけて歩くということを朝まで繰り返すという。

「なにも起きないときは交番の前でずっと張って、走り出ていく警官のあとを追いかけたりした。赤色灯(パトカー)が一台走り出すと、その日は何台も走ることになる。そこが不思議なところ」

 眠くなるとどこからか段ボールを拾ってきて、ホームレスの知人たちと一緒に横になる。あるとき、そうやって寝ている梅崎さんの胸ポケットの財布にそろーと伸びてくる手があった。気づいてパッと払いのけると、ニヤーと笑う顔見知りのホームレスのお婆さんがいたという。私と風林会館で待ち合わせたとき、「まだあの婆さんがいたよ」と嬉しそうだ。

「そういうとき怒ったりしないんですか」

「しょうがないじゃん、生きていくためだもん」

「新宿歌舞伎町滅亡記」を読むと、ホームレスや犯罪スレスレの行為をして毎日をしのいでいる梅崎さんの「友人」たちがたくさん出てくる。大事にしていたテントを売り飛ばされたりもしている。それをこの人は「しょうがない」であっさりと、許してしまうのだった。

 一緒に風林会館前を歩いてると、スーツにアタッシュケース姿の紳士然とした初老の男性とすれ違った。「これはこれは、久しぶりですね」と、にこやかな笑顔で梅崎さんと握手して足早に去って行く。

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