NHK 大阪地検激怒で「取り調べ可視化」番組を放送延期した

NEWSポストセブン / 2013年5月27日 7時0分

 社会の深部を炙り出す報道姿勢で高い支持を得てきたNHKの『クローズアップ現代』。4月中に予定されていた同番組のテーマは「検察の取り調べ可視化」だった。だが、放送は直前に延期され、その判断を巡ってNHK内部で火種が燻っているという。番組関係者が悔しがる。「土壇場になって放送延期になった。現場に通達された表向きの理由は“取材が甘い”というものですが、実情は違うんです」

 発端は、NHK大阪の報道番組『かんさい熱視線』(毎週金曜夜7時30~55分)だった。関西の“いま”を切り取る同番組の4月8日放送回は、「“虚偽自白”取調室で何が」と題され、被疑者が嘘の自白をさせられてしまう取り調べの実態に迫った。番組ハイライトは、2010年9月、兄弟喧嘩の末に弟の首を絞めて窒息死させたとして兄が逮捕・起訴された事件の検証である。

 大阪地検の検事が作成した調書には「隙をついて背後に回り首を絞めた」「手加減しなかった」などと書かれてあり、兄が弟の首を絞めている認識があったかのように読める。しかし取り調べの模様を記録したDVDが裁判員裁判に公開されたことで検察のストーリーは崩壊した。

 DVDには調書に署名した後に、兄が「結果的にそうなってしまった」と話すシーンが録画され、兄の証言が調書の内容と食い違うことが明らかになったのだ。

 結局、取り調べのDVDをもとに「調書は信用できない」として兄は2011年7月に無罪判決となった。その後、大阪地検が控訴を断念し、無罪が確定している。

 番組ではこのDVDを公判の証拠物を保管する担当弁護士から入手し、取調室という密室で“虚偽自白”が作られる瞬間を放映した。大手紙の在阪記者が語る。

「番組を見れば検察の“誘導”は一目瞭然です。DVDは既に公判で公開されていましたが、見たのは裁判員だけ。それをオンエアすることは、報道として大いに意義があると思います」

 大阪地検特捜部が引き起こした「村木事件」(※注)を端緒として、検察は自白に偏った捜査手法の見直しを求められている。2011年6月には法制審議会の特別部会が設置され、取り調べの可視化を始めとする司法制度改革が議論されている最中だ。検事出身の弁護士・郷原信郎氏がいう。

「法制審議会の特別部会では、法務省や検察庁の役人も参加し、取り調べ可視化についての議論も『取調官の裁量に任せる』といった可視化の流れを骨抜きにするような案が次々でてくる。検察は反省が足りない」

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