参院選自民勝利で国会はオール与党の地方議会化との懸念も

NEWSポストセブン / 2013年6月1日 7時0分

 安倍政権が「決勝戦」と位置づける7月の参院選は、すでに自民党の「不戦勝」ムードが漂ってきた。円安・株高を追い風に高支持率を維持する与党、一方で内紛や舌禍で自滅を繰り返す野党を見て、有権者は「投票しても意味がない」という思いを抱き、参院選投票率は史上最低になるのではないかとさえ見られている。

 では、そんな選挙を経た国政はどうなっていくのか。歴史社会学者の小熊英二・慶應義塾大学教授は、「日本の議会制の危機」を指摘する。

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 今の国政は、自民党が「結果的に与党になる状況」が続いている。

 しかし、必ずしも国民全体が自民党を支持しているわけではない。昨年12月の総選挙で自民党の比例区の得票率は約3割弱で、2009年よりも得票数は減っている。この3割という数が、自民党の基礎票といえる。

 また、民主党から自民党に投票先を変えた人は少ない。2009年に民主党に投票した人は、民主、維新、未来、そして棄権の4つに分散した。7割の有権者にまとまった一つの受け皿がなく、相対的に自民党が浮上しただけである。

 図式的にいえば「昔の日本を取り戻したい」という民意が3割あり、その有権者が自民党に投票をした。そして残りの7割は、昔の日本=自民党政治を変える必要があると考えている有権者だと考えられる。

 ただ、その7割の選択は昔の「革新」のようなまとまりはない。例えば、昨年の総選挙の争点が、憲法・原発・TPP(環太平洋経済連携協定)・消費税の4つだったとすれば(実際はもっと多かったが)、有権者の賛否の組み合わせは16通り(2の4乗)になる。7割の票が16に分散すれば、「昔のやり方を踏襲してほしい」という3割の票が確実に勝つ。

 自民党の従来の支持基盤も高齢化や産業構造の変化で弱っているが、他の勢力がそれ以上に小さくばらばらなのだ。その結果、現在は3割の自民党票が国会で圧倒的な議席を取る。選挙による議会制の機能不全といえるだろう。

 現状を見ると、7月の参院選でも自民党以外に「勝つ」政党がない。民主党が「勝つ」可能性は低く、地方に足場のない日本維新の会やみんなの党も同様だ。

 この状況が続いた場合に行き着く政治状況の一つは、国会の地方議会化だ。多くの地方議会は「オール与党」化している。

 その理由の一つは、自治体に権限がないことだ。多少の権限があっても、財源がないからやれることは少ない。またそのなかでその地方をどうするかのビジョンも欠けがちだ。結果、地方の首長に必要な“能力”は、中央政府とのパイプの太さとなり、求められる“政策”は、国からどれだけお金を引っ張ってこられるかにかかる。地方の首長の多くが中央省庁出身の官僚(47都道府県中29人)という現実が、それを暗示している。

 すると地方議会、地方選挙はどうなるか。首長が中央から引っ張ってくるお金に議員が群がり、議会はオール与党化する。有権者も中央とのパイプの太い候補を首長や議員に選ぶ。それ以外に争点がない選挙となれば、投票率も下がり、20~30%台になることも少なくない。首長の無投票当選も相次いでいる。

※週刊ポスト2013年6月7日号

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