《好調》『アンチヒーロー』長谷川博己 善悪の境界線を自在に移り変わる巧みな演技を臨床心理士が分析
NEWSポストセブン / 2024年4月26日 7時15分
テレビドラマの主役として登場する弁護士といえば、分かりやすく正義の味方、弱者の味方という設定が多い。ところが、4月14日から放送されているドラマ『アンチヒーロー』(TBS系)の主人公は複雑だ。臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、善悪が絶妙に入り交る長谷川博己(47才)の演技を分析する。
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春から放映が始まったドラマの中で、唯一視聴率2ケタ台をキープしているのが日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)である。それどころか他のドラマが視聴率を落としている中、このドラマだけは初回より2回目の方が高い視聴率を記録した。
予告編は意味深だった。法廷に立ち、話しかけてくる俳優・長谷川博己が演じる弁護士、明墨正樹はダークなスーツに白いシャツ姿。ノーネクタイで首元のボタンをはずし、弁護士らしからぬラフな印象だ。両手をポケットに突っ込んだまま、やや斜に構えた格好で立っている。主人公の明墨が「正しいことが正義で間違ったことが悪」と鼻で笑いながら、「本当にそうか」と問いかけてくる。刑事ドラマなどでは、刑事といえば両手をポケットに突っ込んでいるのが定番のポーズだが、法廷物の弁護士ドラマで両手をポケットに突っ込んでいる弁護士はあまりいないだろう。
ポケットに手を突っ込むという仕草は、隠し事がある時や知られたくないことがある時に出やすいといわれている。どちらかといえばネガティブな印象になりやすく、正義の弁護士にはふさわしくないだろう。だが長谷川さん演じる弁護士は、ドラマの公式ホームページ(HP)に”アンチ”な弁護士は正義か悪か――!?とあるので、どちらなのかわからない。さらに手の内を見せない、まだ正体を明かさないという意味でも、この仕草は効果的な印象を与えている。
ちなみに刑事のそれは、ポーズがカッコいいというだけでなく、捜査において自分の感情は抑える、捜査状況は漏らさない、捜査内容は明かさないという無意識の表れや、隠された事実を明るみに引っ張りだすという暗喩もあるのかもしれない。
公式HPで「殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます」とあるように、長谷川さん演じる明墨はヒーローとは言い難い限りなくダークな危険人物。悪い顔で笑う姿は、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』やNHK連続テレビ小説『まんぷく』、日曜劇場『小さな巨人』などで見せてきた表情とは違い、TBSドラマ『MOZU』の元公安部捜査官、東役の冷酷さや不気味さを思い出させる。個人的には長谷川さんが演じてきた役の中で、あの東役は当たり役だと思っているので、今回の役を長谷川さんがどう演じるのか楽しみにしていた。
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