脚の切断もある「包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)」でも血液の浄化で改善の道が拓く
NEWSポストセブン / 2024年5月19日 16時15分
【週刊ポスト連載・医心伝身】下肢閉塞性動脈疾患の最重症な病態が、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)だ。創傷や潰瘍、壊死、神経障害などを生じ、血行再建治療でも症状が改善しないことも。そこでCLTIの補助治療として吸着型血液浄化器レオカーナが登場した。これは血液を体外に出し、血中のLDLコレステロールとフィブリノーゲンなどを吸着させ、再び体内に戻すことで、創傷治癒率の向上を促す。
脚の血管の狭窄や閉塞による下肢閉塞性動脈疾患は動脈硬化や糖尿病、慢性腎疾患などの増加に伴い、患者数が増加傾向にある。
主な症状は安静時の脚の痛みや間欠性跛行(歩くと足が痛くなり、休むと歩ける)などで、治療は血管拡張やステント留置、バイパス手術などを実施し、血流を確保しながら症状を緩和させる。しかし、最重症のCLTIでは血行再建をしても効果が得られにくいケースが多い。
順天堂大学医学部附属順天堂医院・足の疾患センターの田中里佳教授に聞いた。
「CLTIでは血管の内側が石灰化して硬くなるため、血管拡張やステント留置、バイパス手術が難しくなり、血流の改善が見込めない患者さんがいます。そうなると虚血になり、創傷や潰瘍、壊死を起こしてしまい、最悪の場合は脚の切断を余儀なくされる症例も少なくありません。そこで動脈硬化の原因であるLDLコレステロールやフィブリノーゲンなどを吸着し、体内に戻す吸着型血液浄化器レオカーナが開発されました」
レオカーナは透析と同じような仕組みだ。一度、血液を体外に出して、浄化器内に設置された特殊なシートでLDLコレステロールとフィブリノーゲンなどを吸着し、浄化された血液を体内に戻す。
下肢の末梢血管は赤血球1個がようやく通るくらいの細さのため、LDLやフィブリノーゲンなどの血漿成分は引っ掛かりやすく、その先で虚血を起こしやすい。これらをレオカーナで除去し、血液をサラサラにすることにより、末梢血管にも血流が再開通するようになるわけだ。
また副次的効果としては炎症性サイトカインが除去されること。除去されると血管の炎症が減り、血管拡張作用があるNO(一酸化窒素)の産生促進によって、末梢血管の血流を改善させるなどの効果も期待できるという。
「レオカーナの治療時間は1回につき、平均で2時間程度です。3か月で24回分の治療が保険適用になっていますが、治療4回目くらいから脚の痛みが軽減してきた患者さんもいらっしゃいます。治療対象は血管再建でも症状が改善されない患者さんですが、体重が40kg未満の場合は血圧の低下のリスクが高いとのことで、治療の対象外になっています」(田中教授)
下肢の虚血は自覚しにくい。それでも下肢の冷感、間欠性跛行、皮膚の色調変化などがあると気づいたら、なるべく早く循環器内科や専門外来に足を運んだほうがよい。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2024年5月31日号
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