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臓器に悪さする「異所性脂肪」は毒性で生活習慣病を引き寄せる

NEWSポストセブン / 2024年6月19日 16時15分

痩せていても異所性脂肪が確認される場合も(イラスト/いかわやすとし)

【週刊ポスト連載・医心伝身(最終回)】脂肪細胞がない臓器に脂肪が蓄積するのが、異所性脂肪だ。肝臓や骨格筋、すい臓などの細胞に脂肪が入り込み、臓器の機能を低下させ、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病を引き起こすきっかけとなる。肥満の人だけでなく、痩せていても異所性脂肪が確認される場合もあるため注意が必要で、初期なら適切な食事と運動により減らすことが可能だ。

 皮下脂肪と腹部(主に腸の周辺)の内臓脂肪は、脂肪細胞に脂肪が蓄積される正所性脂肪であり、過剰なエネルギーを中性脂肪に変えて蓄える働きをする。それに対し、脂肪細胞ではなく、通常の臓器細胞に入り込み、蓄積するのが異所性脂肪で、肥満者に多い。見過ごしがちなので注意しなければいけないのは日本人の場合、遺伝的に皮下脂肪がたまりにくいため、痩せていても異所性脂肪がたまっていることがあるのだ。

 九州大学病院内分泌代謝・糖尿病内科の小川佳宏主幹教授に話を聞いた。

「異所性脂肪は、40歳以上の男性と閉経後の女性にたまりやすいといわれています。さらに体重は変わらないのに、ベルトがきつくなった、お酒をほとんど飲まないというのに、ALTやAST(ともに肝機能数値)が上がった。または高齢で筋肉が衰えたのに、体重が以前と変わらないといった方には、異所性脂肪が蓄積している可能性があります。それからシフトワーカー(交代制勤務)の方も、生活リズムが乱れることで、異所性脂肪がたまりやすくなります」

 その異所性脂肪が怖いのは、臓器の機能を障害する脂肪毒性だ。例えば、肝細胞に脂肪がたまる脂肪肝では、脂肪毒性により肝機能が低下し、NASHやNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)を引き起こす。それがきっかけとなって、最終的に肝硬変や肝がんに繋がるケースもある。

 他にも、すい臓のベータ細胞に脂肪がたまると、インスリンの分泌が低下し、この状態が長く続くと、糖尿病の要因になる。加えて骨格筋に脂肪がたまると、食後に血中に入った糖質を筋肉が吸収する働きが低下してしまい、それがインスリンの働きを弱めるので、結局は糖尿病の発症に繋がるというわけだ。

「異所性脂肪を放置したら、臓器の炎症・線維化が進行し、なかなか元には戻せません。しかし、臓器の障害が軽い時期であれば、対策が可能です。異所性脂肪の治療としては、徐々に行なう減量。脂質と糖質の過食をやめ、適度な運動を続けることで、脂肪を燃焼させることができます」(小川主幹教授)

 食事以外にも、十分な睡眠を取り、過剰なストレスを避けることが大切なのはいうまでもない。ただ、やはり食は生活の中心だ。そこに制限を設けるのは辛い。それでも医師と相談しながら、食事の素材や摂り方を工夫することにより、病気を遠ざけられる。

 また、継続も大切であり、健康は毎日の小さな積み重ねで保たれていることを今一度、胸に刻んでおきたい。

取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号

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