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【がん治療】部位、進行度、年齢などによっては“治療がかえって悪影響を及ぼす”可能性 “がん発見のショック”が寿命に悪影響を与える懸念も

NEWSポストセブン / 2024年6月22日 11時13分

 内科医の名取宏さんは「どちらのがんも進行が遅い特性がある」と話す。

「そのため検診によって無症状の段階で見つかりやすいのですが、基本的には症状が出てから治療をしても遅くない。一方、手術などでがんを根治しようとすれば、QOL(生活の質)が低下したり合併症が起きたりするリスクがあります」

 そのため現状、日本癌治療学会が発行するガイドラインでは、甲状腺がんは1cm以下の場合、治療をせずに経過観察をすることが推奨されている。

「甲状腺の近くには『反回神経』と呼ばれる声帯や嚥下機能を司る重要な神経が通っているので、手術で神経が傷つくと、声がかすれるなどの後遺症が残るケースがあります。近年では1.5cmや2cm以下のがんであっても手術は不要だという意見もあり、調査が進められています」(名取さん)

 東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授の中川恵一さんも甲状腺がんを治療するかどうかの選択には慎重になるべきだと声を揃える。

「甲状腺がんは子供にも罹患者が多く、成人するとほとんどの人が甲状腺がんを潜在的に持っているといわれています。しかし多くの場合、大きくなったり悪化することはなくそのまま寿命を迎えることになります。

 甲状腺がんが原因で命を落とすことはほぼないため、それを切除するために後遺症が生じる懸念のある手術を受けるのはあまりにもデメリットが大きい。また、治療後にホルモン剤をのみ続ける必要があることも負担だと感じる人が多いです」(中川さん)

「あなたはがんです」に伴うストレス

 そうした「過剰治療」に加え、がんを見つけ出すことそのものが大きな負担を生むケースもある。主婦のOさん(58才)は、80代の父親に検診を受けさせたことを悔やんでいると打ち明ける。

「泌尿器科で前立腺がん検診を受けたところ、がんが見つかりました。高齢ですし、そこまで大きいがんではなかったから手術の必要はないと経過を見守ることになったのですが、父はがんだと宣告されたことがショックで落ち込み、不安に駆られた結果心身共に弱っていって、いまは寝たきりに近い状態です。

 経過観察のために病院に通うのも体の弱った父にとっては大きな負担になっていて、見つけ出さなければこんなことには……と後悔しています」

 名取さんは、がんの発見に伴うストレスは寿命を縮めかねないと指摘する。

「がんと診断されることで受ける心理的な負担は、患者さんが想像している以上に大きいことが多いです。経過をみるための通院は心身共に消耗するうえ、手術をしても『再発するかもしれない』と、不安が残る。実際、がんの宣告を受けた人は不安の兆候が多いという心理試験のデータもある。“不安の種”を生まないためにも、厚生労働省が推奨している乳がん・胃がん・肺がん・大腸がん・子宮頸がん以外のがん検診は、基本的におすすめしません。

 韓国では積極的に甲状腺がん検診が行われた結果、命に影響がない小さな腫瘍まで見つかり、甲状腺がん患者がおよそ20年間で約15倍に増えるという事態が発生しました」

 がんが発見されなかったとしても、受けたこと自体が新たなリスクを生む検診もある。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが解説する。

「代表的なのは、胸部X線による肺がん検診です。胸の正面から放射線を照射するので、肺全体が被ばくします。定期的に胸部X線検査を受けていた人は、受けていない人に比べてはるかに肺がんが多く、死亡率も高いという研究結果があるほどです」

(後編へ続く)

※女性セブン2024年7月4日号

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