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【がん治療】欧米で広く取り入れられる、直ちには切らない「監視療法」 日本では国民皆保険制度で手術費用が安く「切りましょう」が基本に

NEWSポストセブン / 2024年6月23日 10時59分

「最近は放射線治療も進歩して、手術を避けられるケースもあるし、早期の食道がんや胃がんであれば、内視鏡手術ができ、さらに進行しても腹腔鏡や胸腔鏡による手術が可能です。にもかかわらず体への負担が大きい開腹手術が行われることもある。

 特に胃や食道はがんが切除できたとしても、術後の後遺症で消化が悪くなり、満足に食べられなくなったり、発声が難しくなってコミュニケーションが困難になるケースが少なくない」

 そもそも日本は国民皆保険制度で誰もが少ない負担で治療を受けられるため、海外よりも過剰治療が行われやすい背景がある。

「日本以外の先進国では、手術を行わずに放射線による治療も積極的に行われていますが、日本ではいまだに“がんが見つかれば切りましょう”が基本です。アメリカと違って手術費用が安いので、患者側も、医師の指示通りに手術を受けた方がいいという判断に傾きやすい」(室井さん)

 新潟大学名誉教授の岡田正彦さんは、手術に加え、抗がん剤の一種である化学療法剤も体に与えるダメージが大きいと指摘する。

「特に古くから用いられている化学療法剤は副作用が強いうえ、がん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるので、体への影響が大きい。世界的に使われている複数の化学療法剤の効果を比較した臨床試験のデータを調べたところ、投薬することによって最終的に寿命が延びた薬は1つもありませんでした。

 不必要な治療を受けたがために、健康寿命を縮めてしまうことがあると知っておいてほしい。何もしない方が、少し元気に長生きできることもあるのです」

 岡田さんによれば、海外では化学療法剤ではなく、がんの原因となるたんぱく質など特定の物質だけに作用する「分子標的薬」に置き換わってきているという。

進行がんを治療できる医師は名医

 がん治療における“やりすぎか”“必要か”の判断の取捨選択をするうえで、年齢によっても治療方針を変えるべきだと、ひらやまのクリニック院長で介護施設を中心に診療を行う医師の森田洋之さんは主張する。

「年齢を重ねるほどがんの進行は遅くなるので、50代や60代のがんと80代以降のがんでは性質が異なります。また、高齢になるほど、体力や精神力の個人差が大きいため、治療法については個別的な対応が重要になってくるのです」

 では、目の前の患者に多すぎず少なすぎず、適切な治療を施してくれる、あるいはあえて「しない」という選択肢を提示してくれる医師や病院はどう選ぶべきなのか。名取さんは「がん診療連携拠点病院で治療を受ければ、大きく外れることはない」とアドバイスする。

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