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認知心理学者・今井むつみさん 初のビジネス書についてインタビュー「情報をどう取り込んでどう解釈するか、が大事」

NEWSポストセブン / 2024年6月23日 16時15分

 私たちの認知は時にバイアスがかかり、記憶を書き換えることもある。そう認識したうえで、どうすれば言ったことが伝わり、言われたことが理解できるか、コミュニケーションの具体的なコツも示される。ビジネスの現場だけでなく、学校や家庭でも役立ちそうな内容だ。

「それは確かにそうですね。ふだん私はビジネスパーソンよりも学校の先生を相手に話すことが多いんですが、コミュニケーションに関してビジネスパーソンに言えることはほとんど先生にも当てはまります。もちろん、家庭でのコミュニケーションにも同じことが言えます」

 私たちの記憶容量は「1GB」ほどしかないという、アメリカの認知科学者の話が紹介されていて衝撃を受けた。コンビニで数百円出せば買える16GBのUSBメモリにもはるかに及ばない容量で、私たちは記憶を出し入れしながら日々暮らしているのか。人間には直観があり、直観を磨き続けることができるが、AIが人間から直観を奪うかもしれない、という指摘も興味深い。

 いかにも経済界が関心を持ちそうな分野なので、基礎科学である認知科学が産業とそれほど直接の結びつきがない、と書かれているのは意外に思えた。

「アメリカだと、たとえば私が学んだノースウェスタン大学の心理学部の隣にケロッグスクールという全米でトップクラスのビジネススクールがあって、そこの学生は認知心理学の授業を受けに来ていました。ビジネススクールで経済やマネジメントを学ぶには、認知心理学の知見が絶対必要だというのはアメリカでは当たり前ですが、日本ではそれほど認知されていないですね」

 ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンはもともと基礎心理学の研究者だが、経済学者と紹介されることも多いという。

「実験協力者が勝手に解釈しない」のはすごく難しい

 文章を書くとき、「何回説明しても伝わらない」を避けるテクニックみたいなものはあるのだろうか。

「私は長年、心理学の実験をやってきたんですけど、実験するときすごく大事なポイントが一つあります。それは、いかに実験協力者が指示を勝手に解釈しないように、こちらの求めることを誤解なくしてもらうかということ。当たり前のように聞こえるかもしれませんが実はすごく難しくて、例えば協力者は大学生が多いんですが、常に指示を読み違えて勝手なことをする人が出てきます。それをいかに防ぐか。相手が子どもになると、それはさらに難しくなります。

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