医師らしい説明も安心材料だけど、「お元気そう」の言葉がどれほど心の薬か…オバ記者が体験した患者の疑心暗鬼と医師の優しい嘘
NEWSポストセブン / 2024年7月15日 16時15分
それでも思い当たることもあるの。私は以前、中年期の頃、初老の女たちが集まるとまずは互いの体の不調の話をするのを見て、当たり障りのない健康話から始めるのは大人の知恵なのかなと思って聞いていたんだわ。が、自分がその立場になってスッとわかったね。体の話は“自分の立ち位置の確認”なんだよね。
「立ち上がってもすぐに動けない? やだ、私なんか60前からそうよ。だからいまは、立ち上がったらひと呼吸おいて、私は次に何をしようとしているか、そのためにはどうするか、確認してから動き出す。こうすると、『あれ? 私、何しようとしていたんだっけ?』と思わなくなるよ」と言ったのは専業主婦のM美さん(66才)だ。
M美さんは私と違ってちゃんとウエストもあるし、規則正しい生活をしているせいか、肌はピカピカ、背筋はシャン。その彼女がそんなことを言ったから、びっくりすると同時に安心したわけ。彼女が老いるなら、私みたいな“歩く不摂生女”にガタがきても仕方がないよ、と。
それから半月ほど。術後1年半のCT検診に行ったら、私の心配を吹き飛ばすようなことをE医師から言われたのよ。
「今後、手術の痕からがんが発症する可能性ですか? ほぼゼロですね」とサラッと言うから思わず「えーっ、ゼロですか?」と聞き返すと、「はい。それは手術した直後からわかっていたことですが、万が一ということがあるので医師の口からは言えないんです」と。さらにE医師は私の顔を見て、「それに野原さんのお顔、お元気そうじゃないですか」だって。
血液のデータや画像がどうしたこうしたと医師らしい理屈を説明されるのももちろん安心材料だけど、優しく微笑みかけてくれるあの笑顔と「お元気そう」の言葉がどれほど心の薬になるか。
そうだよね。67才なら67才なりの元気があって、人に元気そうな顔を向けることができたら元気。そう決めて、ムダな心配はしないことにしようと思ったのでした。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年7月25日号
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