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ラーメン店での「イヤホン論争」の無駄な盛り上がりに何を学ぶか

NEWSポストセブン / 2024年7月15日 16時15分

 しかし、それを「当然のマナー」と受け止める人ばかりではないのが、世の中や人間の「多様性」です。そして、自分では思いもよらない意見が頼みもしないのに可視化されるのが、ネット社会のありがたくも厄介な特性です。

「客がどんなふうにラーメンを食べようと自由だ」(食べる前の段階で、店員さんの話をちゃんと聞いてほしいという話なのに)

「店側の都合を押しつけるな」(ほかのお客さんの迷惑も少しは想像しろって話なのに)

「イヤホンをつけられない店なんて行かない」(どうぞ好きになさってくださいという話ですけど、なぜそこまで頑なになる必要があるのか)

「イヤホンのように見える補聴器もある」(店主が補聴器ユーザーを排除しようという意図がないことは、書くまでもない大前提だろうし、読む側にも十二分に伝わっています。「強いカード」を持ち出してきて、得意気に揚げ足を取っているに過ぎません)

 店の立場に賛同する側の意見も、じつに多種多様です。「当然のマナーだよね」「お行儀が悪いよね」と思ったとしても、「『当然』の根拠は?」「お行儀がいい悪いの基準は?」などと不毛なツッコミが入りそうなので、もっともらしい根拠を付け加えがち。「その店で食事をする限りは、店が決めたルールに従うべきだ」とか「客は神様ではない。店にも配慮すべきだ」とか……。知性をにじませたいのはわかりますが、いちいち話が大げさです。

誰も人の話に耳を傾けていない。イヤホンの話題なのに

 この手の論争は、盛り上がることで議論が深まるかというと、ぜんぜんそうではありません。むしろ逆で、盛り上がれば盛り上がるほど、話の流れがよくわかっていない人や、気の利いたことを言いたいだけの人が群がってきて、迷走の度合いを深めていきます。「イヤホン論争」でも、各自が「俺に言わせりゃ」と言い合ってるだけで、誰も人の話に耳を傾けてはいません。イヤホンの話題なのに。

 今回の「イヤホン論争」に限らず、これまでもラーメン店を舞台にして、食べ終わった丼にティッシュを入れるのは是か非かという「ティッシュ論争」や、店に入ったらひとり1杯以上注文すべきかどうかという「一人一杯論争」など、多くの論争が勃発しました。

 ラーメン店という誰もが行ったことがある場所で、誰もが目撃したことがありそうなシチュエーションで、人によって考え方や感覚に微妙な違いが生じる論点となると、たくさんの人が口をはさみたくなるのでしょうか。おいしそうなラーメンの香りと同じで、スマホやパソコンの中から、あなたを誘う魅惑的な香りが漂ってきます。

もしあなたがふらふらとネット上の論争に参加するとしても、あくまでヒマつぶしというスタンスを保つのがオススメ。「新たな気づきを得たい」とか、あるいは「違う意見の相手をやり込めたい」といった前のめりな動機で参加しても、嫌な気持ちになったり疲弊したりするだけです。ネット上の論争の勝者は、論争に参加しなかった人です。

 そういう意味で、こんなふうに「イヤホン論争」を題材にしたコラムをまんまと書いている私は、見事に惨敗してしまいました。どうぞ指さして笑ってください。でも懲りずにまた立ち上がって、元気を出すべくラーメンでも食べに行きます。もともとイヤホンは使っていないので、うっかり「当たり前のマナー」に違反してしまう心配はありません。

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