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【パリ五輪はどうなる?】柔道国際大会への「ジュリー制度」「ビデオ判定」の導入でなくなる“誤審の涙” 柔道界の鉄人は「審判員の威厳低下」を懸念

NEWSポストセブン / 2024年7月25日 11時15分

“一本”と判定したのにビデオで“技あり”に格下げされようものなら、仮に私が主審だったら屈辱以外の何ものでもありません。審判の威厳はどんどん失われていく。それどころか今の審判員たちは“判定が覆っても仕方ない”とさえ思うようになっている」

 2023年4月、全日本選抜柔道体重別選手権女子63㎏級の準決勝で、異例の判定変更があった。立川桃が相手に右肘を巻き込まれながら倒され、そのまま腕ひしぎ十字固めで敗れた。

 ところが決勝戦がなかなか始まらない。そして準決勝から1時間ほど経過してから場内放送で、「準決勝の判定に間違いがあり、勝者は立川さんとなりました。立川さんは試合会場にすぐ来てください」と館内放送が流れた。すでに私服姿だった立川は慌てて柔道着に着替え、畳に上がると立川の勝利が告げられた。

 試合後に改めてビデオ判定した結果、相手選手が一発反則負けとなる「立ち姿勢からの脇固め」をかけていたと確認されたのだ。立川は決勝でも勝利し、大会初優勝を飾った。

「全日本体重別は五輪や世界選手権の代表選考に直結する重要な大会です。準決勝の主審は“モニターで見てくれているので”と話していたそうですが、審判の開き直りにも感じます。ビデオが最終判断してくれるという甘えが、どんどん判定ミスに繫がっていくのではないかと心配しています」

 これまで多くの選手が「誤審」によって涙を流してきた。それがなくなる“代償”として、審判の威厳はどんどん失われている。とりわけ柔道では競技の性質上、「実績を残した高段者が審判を務める」という伝統が重んじられてきただけに、正木としては複雑な思いを抱えているようだ。

(了)

※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成

【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。柔道の審判員のほか、野球やサッカー、飛び込みといった五輪種目を含む8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。

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