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【老老介護殺人】妻を絞殺した老人・単独インタビュー「はじめは大きな声を出すから口を押さえようと…」30年連れ添った認知症の妻の首を絞め、さらに血圧計の電源コードが目について

NEWSポストセブン / 2024年7月30日 15時57分

 事件が置きた10月1日について話を聞く。

妻の首に手をかける直前の心境は

「いつもは何時間か経つと、静かになって寝てくれたわけね。でもね、あの時はね、ここ(取材場所となった吉田さん宅のリビング)で昼飯を食べた後もずっと調子が悪かった。すぐに(家から)出て行こうとしちゃうから、連れ戻してベッドに連れて行って。俺はベッドに座って4時間ぐらい話したんだろうな。

 正論が通じなかった。いつものように浮気したとか、お財布を盗んだとか、そういう話でした」

 夕食後も節子さんの様子は変わらない。

「食べている時も辻褄が合わない話をずっと。支離滅裂な話をしてて、話もあっち行ったりこっち行ったりするし、今日の話から10年前、30年前の話が全部一緒になってくるから。おっきな声出して怒り始めるしね。

 すぐに出て行こうともする。どれだけ時間が経っても終わらない。午後6時前後から食事して、普通だったら9時頃になると寝るんだけども、寝ないしね。しょうがないから向こう(ベッドがある部屋)へ連れてって、ベッドに横並びでまた座って、話をしていた」

 延々と続く、辻褄の合わない会話、節子さんの怒鳴り声、吉田さんはついに手を出す。

妻の首を絞めた「電気コード」その時

「初めは大きな声を出す節子をおさえるつもりで、右手だけで口を抑えてるつもりだったからね。刑事にも検察官にも何度も聞かれたけども、そんなに強烈に抵抗されたっていう意識がないんです。初っ端の取り調べの警察官の調書だと、口から泡を吹いてなんとかって言ったけど、そんな覚えないんだよね」

 捜査当局は介護疲れというよりも、衝動的な犯行とみて捜査を続けた。それには理由がある。吉田さんは節子さんの首を手で締めただけではないからだ。

「手で締めた段階でもう、もしかしたら死んでいたのかもしれない。でもね、気を失ったようにも見えて、(節子が)気がついたらうるさいんだろうな、また始まるんだろうなっていうのがあったよね、どっかにね。

 ベッドに2人で並んでいました。つき当たりの本棚の上に血圧計をのっけていたから、その電気コードがこう垂れているわけです。また節子が気がついたら、騒ぎ出すんだろうなっていうのが(頭の)どっかにあったんだよね」

 吉田さんはまったく動かない節子さんの首にコードを巻き付け力一杯、締めつけていた。沈黙が続き、部屋が重い空気に包まれる。

「(節子さんが死んだほうが)自分自身が楽になるのかなっていう気があったことは事実だよ。だから、こういうことを言うと、また弁護士さんに怒られる。それは独りよがりな感覚でね。それが強固な殺意だって(検察が)いうことになるわけだよね」

 ただ、「もうこれ以上、騒いで欲しくない」という利己的な思いだけではなかったのだという。記者が「節子さん自身を楽にさせてあげたい」という思いがあったのかどうか尋ねると、吉田さんはこう答えた。

「それはないって言ったら嘘になるね。どっかに……。やっぱり……もしかしたら、それで(節子さんが)楽になれるのかなっていうのはね。うん。俺がじゃなくて」

 涙ながらに当時を思い出そうとする吉田さん。

 血圧計のコードを抜いた時の細かい点などを尋ねても「覚えていません」という言葉を繰り返すばかりで、並の精神状態では無かったことが窺える。そうしたなか、ただひとつはっきりと覚えていることがあるという。

「1年近くが経った今でも、(節子の首を締めた)手の感覚は残っています」

 しわだらけの手を見つめながらそう言葉を絞り出した。

(第4回に続く)

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