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数々の犯罪捜査に携わってきた元刑事が一番に思い出す現場 遺体を取り囲むバケツから放たれていた臭気の正体

NEWSポストセブン / 2024年7月28日 16時15分

 警察による死因究明は大まかにいえば2通り、事件性があるかないかに分かれる。不審死や孤独死の場合、犯罪や犯罪の疑いがあれば遺体は司法解剖され、一見してその疑いがなければ行政解剖となる。

 解剖にもいくつか種類がある。1つは系統解剖(正常解剖)で遺体を解剖して人体の構造を調べるもの。2つ目は病理解剖で病気により亡くなった人の遺体を解剖して今後の治療などに役立てるもの。3つ目は法医解剖で、行政解剖、司法解剖が含まれる。行政解剖は事件性のない遺体の死因を究明するもの。司法解剖は事件による被害者や事件性が疑われる遺体の死因を究明するために行われるものである。他に遺族が解剖を承諾する承諾解剖がある。

 女性の遺体は行政解剖され、死因は吐しゃ物による窒息死と判断された。若い女性が亡くなったとはいえ、この状況はどこかで聞いたことがあるような話だろう。ではH氏にとって何が奇怪だったのか。

 彼らを襲った臭気の原因は糞尿だったのだ。女性は枕元に小さなバケツを置き、そこでトイレを済ませていたのだ。寝ていて尿意を催した時、トイレまで行くのが面倒だったのだろうか。枕元に置いたバケツに排泄していたのだ。だがH氏が驚いたのはそれだけではない。バケツは1つではなかったのだ。同じようなバケツが、ベッドの周りにいくつも置かれていたのである。「見た時はさすがに信じられなかった。会社務めをしていた若い女性が、ベッドの周りにぐるりと排泄物が入ったバケツを置いていた。オシッコ入りのバケツに囲まれ毎日寝ていたんだ」。なぜそうしていたのか、いつからだったのか、わからなかったとH氏はいう。

 他の人間には考えられない、理解できないような物をコレクションしたり、ため込んでしまう人間はいる。ゴミ屋敷といわれる家屋の住人もそうだろう。だが女性がため込んでいたのは、自分の糞尿だったのだ。「どうやってアンモニア臭を消していたのかわからないが、同僚たちはいつも一人でいる女性を、体臭がきついぐらいに思いほとんど気にかけなかったようだ」(H氏)。

「孤独死で発見が遅れ遺体が腐ってしまった現場や、入浴中に亡くなり遺体が溶けかかったような現場にも行ったが、あの現場の臭いはそれ以上に目に刺さるような臭気だった。あれを見て、臭いを嗅いだ遺族はどう思ったのだろう。それを思うと心が痛む現場だった」(H氏)
 
 元刑事にとって思いだすのもおぞましいという事件は、殺人事件だけではないようだ。

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