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「生きとったんか!」山一抗争で山口組組長を射殺したヒットマン部隊直属の指示役が逮捕されヤクザ界騒然 指名手配され約40年行方不明だった男の“数奇な運命”

NEWSポストセブン / 2024年9月11日 11時15分

 もし時効が成立していなかったら、裁判はどうなったか?

 竹中四代目射殺事件は、2系列のヒットマン部隊が合流し、協力・連携して殺害を実行している。竹中四代目が囲っていた愛人のマンションを突き止め、2階の1部屋をアジトとして借りていたのは、一和会でも他の組織の組長だった。

 山広組のナンバー2だった後藤容疑者はその組長に談判し、ぜひとも自分に殺害実行役を譲ってほしいと懇願した。申し出を承諾し、アジトをはじめ武器を提供したこの組長は、もうひとりの指示役と認定され、暴力団事件の量刑が軽かった当時でも死刑が求刑され、無期懲役の判決が出ている。直属指揮官だった後藤容疑者なら、死刑でもおかしくない。

「今は社会秩序への挑戦と解釈され、暴力団事件の判決は重い。3人を射殺した事件の指示役ですから、現在、同様の事件を起こせばほぼ死刑です。ただ裁判は行為時の法律が前提なので、同じような立場の共犯者が無期なら量刑を揃えるかもしれない」(法政大学で弁護士実務を教え、暴力団事件の弁護経験がある坂本正幸弁護士)

 報道によると「捜査関係者は取材に『今後、事件について任意で事情を聞くことはできる』」(9月3日付読売新聞)そうだが、事件の担当である大阪府警や警察庁にとってはいまさらだろう。

 警察は慢性的な人手不足の上、告訴案件がやたら多い。いにしえの抗争事件にかかずらう暇はない。ある警察関係者はいう。

「ベテラン捜査員たちに一種の懐旧はあるだろう。でも根掘り葉掘り訊いたところでどうにもならない。長崎県警も過去の抗争事件に興味はないはず。名誉毀損云々も身柄を確保するための引きネタで、本当は被害者が自殺に至った件をきっちり解明したいのだろう。勾留できる22日間の間にやれることをすべてやるという腹づもりでは」

詫び状を郵送

 突然の逮捕劇に一番びっくりしているのは、山口組弘道会関係者かもしれない。

 竹中四代目が殺されてから1か月も経たない1985年2月23日、山口組本部の岸本才三組長宛に、ヒットマンの地下司令官である後藤容疑者から詫び状が郵送されてきた。

「今般、私達の犯したことで山口組に多大な迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。また、世間に不安を巻き起こしたことを反省し、後藤組一同カタギになるつもりです(以下略)」

 詫び状の背景には、後藤容疑者が率いる後藤組若頭の拉致事件があった。

 まずは後藤組若頭の知人がさらわれ、津市のホテルに監禁された。その身柄を餌に、今度は若頭本人が呼び出された。拳銃を突き付け、黒いセドリックに押し込んで拉致したのは、現在、六代目山口組若頭補佐で、弘道会三代目の竹内照明会長をリーダーとする報復部隊だ。その後、後藤容疑者は拉致された若頭の解放と引き替えに引退・解散し、詫び状を山口組に送った……というわけである。

 こうして一和会はトップとナンバー2を殺害するという大戦果を挙げながら次第に劣勢となっていった。

 以降、実に40年もの間、後藤容疑者の行方は分からなかった。亡霊にも言い分はあるだろう。ヒットマンの4人は全員無期懲役となり、今も獄中にいる。ぜひとも真実を明かし、骨肉の殺し合いに終止符を打ってほしい。

【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年北海道生まれ。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。

※週刊ポスト2024年9月20・27日号

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