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《子役時代は“ひろくん”》真田広之、エミー賞受賞の20年以上前からもっていた“製作者目線” 現場では十手の長さにこだわり殺陣シーンでは自らアイディアも

NEWSポストセブン / 2024年9月18日 16時15分

日本人俳優として初の快挙となるエミー賞を受賞した真田広之(時事通信フォト)

 米テレビ界最高の栄誉とされる第76回エミー賞。日本の戦国時代を舞台にした『SHOGUN 将軍』が連続ドラマ部門の作品賞をはじめ、技術系部門でも編集賞や撮影賞など14部門で受賞、単年では史上最多の18冠に輝いた。主演の真田広之は、連続ドラマ部門主演男優賞、アンナ・サワイも主演女優賞を受賞。日本人俳優として初の快挙となった。

 この作品のプロデューサーも務めた真田は授賞式で、「これまで時代劇を継承して支えてくださったすべての方々、そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」と日本語でスピーチした。このドラマのファンはもちろん、時代劇を愛してきたファンも胸が熱くなったに違いない。

 真田の時代劇歴は長い。

 1969年、『水戸黄門』第一部に子役で出演。粋な渡世人(渡哲也)とも出会っている。そのころから、太秦の東映京都撮影所の斬られ役さんやスタッフに「ひろくん」と親しまれていたという。千葉真一がアクション監督を務めた1980年の初主演作『忍者武芸帖 百地三太夫』では、高さ25メートルの城の天守閣から飛び降りるというアクションを披露して、観客を驚かせた。以降、80年代には、深作欣二監督の『魔界転生』、薬師丸ひろ子と共演した映画『里見八犬伝」やドラマ『影の軍団」シリーズなどで活躍、1991年、大河ドラマ『太平記』に足利尊氏役で主演した。

 私は、1997年の主演作、NHK『新・半七捕物帳』を取材したが、現場でよく耳にしたのは「真田さんはスタッフとよく話をする」ということだった。岡っ引きの十手の長さにこだわり、殺陣では自らアイディアを出すこともあった。当時から、製作者的な目線があったのだと思う。

 そして2002年、真田の演技力が高く評価されたのが映画『たそがれ清兵衛』だった。役柄は、幕末、庄内の海坂藩の下級武士・井口清兵衛役。ベテラン山田洋次監督がこだわり抜いた初時代劇映画で、真田にとっては初の山田作品だった。クライマックス、清兵衛と脱走した藩士(田中泯)との一騎打ちは、突く、斬る、たたく、リアルで激しい。この殺陣の撮影には10日間を費やしている。静かな暮らしに幸せを見出す武士と家族の心情が繊細に描かれたこの作品は、国内で数多くの映画賞を獲得し、米アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。
この映画の美術監修を務めた西岡善信さん(2019年没)は、映像美術の大御所で、美術を担当した市川崑監督のドラマ『源氏物語』(1965年・毎日放送 光源氏は伊丹十三)はエミー賞フィクション賞(当時)を受賞している。もっとも、当時は「エミー賞ってなんやねん?」という雰囲気だった(西岡さん談)というから驚きだ。
その後、1980年に、リチャード・チェンバレン、三船敏郎らが出演した大作ドラマ『将軍 SHOGUN』でも美術を担当。この作品はエミー賞美術監督賞にノミネートされ、西岡さんたちは紋付き袴で会場に乗り込んだが、受賞は逃がしている。なお、真田主演『SHOGUN 将軍』 にテクニカル・スーパーバイザーとして参加している原田徹監督は、長く京都で深作欣二、五社英雄、工藤栄一など名だたる監督の時代劇に関わり、西岡さんの作品でも実績を積んだ演出家だ。

 2003年、トム・クルーズ主演の映画『ラストサムライ』 出演を機に、真田はアメリカに拠点を移す。この作品には、「日本一の斬られ役」「五万回斬られた男」として知られた福本清三さん(2021年没)も出演していた。福本さんも真田を「ひろくん」と呼び、その成長と活躍を喜んでいた一人である。

『SHOGUN 将軍』の吉井虎長(真田)には、鋭さとともに風格があった。スピーチにあった「これまで時代劇を継承して支えてくださったすべての方々」がこの人物を作り上げたのだと思うと本当に感慨深い。続編に期待すると同時に、国内外で時代劇の情熱と夢がさらに広がることを願わずにはいられない。おめでとうございます!(時代劇研究家・コラムニスト・ペリー荻野)

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