【自民党総裁選で「高市早苗現象」】アベノミクス継承の積極財政で財務省と戦う姿勢 「高市氏かそれ以外か」の構図が固定化か
NEWSポストセブン / 2024年9月21日 10時58分
自民党総裁選は世論調査で人気の高かった小泉進次郎・元環境相と石破茂・元幹事長の一騎打ちと見られていたが、告示後に構図が激変した。高市早苗・経済安保相が党員・党友の支持を急速に拡大させている。まさに“高市現象”が起きているのだ。【全3回の第2回。第1回から読む】
アベノミクスの継承
“高市現象”は経済界にも波及しているようだ。
東京商工リサーチが行なった総裁選の企業向けアンケート調査(回答5921社)によると、「日本経済・自社ビジネスの発展に寄与すると思う」候補のトップは高市氏(1447社)で、2位の石破茂氏(1005社)、3位の小泉進次郎氏(492社)に大差をつけた。
その大きな理由が経済政策だ。
日本経済は日銀の利上げをきっかけに急激な円高が進み、好業績が続いていた輸出企業が業績悪化に転じると予想され、株価は大幅下落。本格化した賃上げも景気後退すれば今後は期待できなくなると懸念されている。
そうした状況だからこそ、高市氏と他の総裁候補の経済政策の違いが際立って見えるのだろう。
高市氏は、「金利をまだ上げてはいけない。企業が設備投資をしにくくなる」と日銀の利上げに反対。さらに「緩やかに物価が上がり、給料も上がり、消費が増えるまでは財政出動をしっかりとして、経済を強くしないといけない」と積極財政の主張を鮮明にしている。
他の総裁候補たちは「所得倍増」「増税ゼロ」などのフレーズを掲げるものの、高市氏ほどはっきりと積極財政路線ではなく、インパクトが弱い。財務省との関係が深く、正反対の「緊縮財政」路線に向かうと見られる候補も多い。
産経新聞元論説委員(現・特別記者)の田村秀男氏が指摘する。
「積極財政はデフレ脱却を重視するアベノミクス路線の継承ということです。デフレはお金が市中に回らなくなることで生じる。そこで政府が積極財政でお金を供給することで、企業の仕事が増え、売り上げが伸びれば賃金も上がり、株価にもプラス。ところが、総裁候補には財務省寄りの財政再建派が多い。積極財政で財務省と戦う姿勢なのは高市氏だけでしょう」
大手メディアの総裁選報道は視聴率が取れそうな進次郎氏の動向を中心に報じ、保守層や経済界で起きている“高市現象”をほとんど報じない。
新聞・テレビが積極的に取り上げないのは、高市氏が容赦なく“マスコミ追及”に走るスタンスも関係あるだろう。大手紙政治部記者が言う。
「6月には、“高市氏が党の地方議員に総裁選出馬を明言した”とする新聞報道を自身のXで否定。〈『高市早苗潰し』が目的と思われる記事〉と激しく追及した。ネット上の同調者も多く、炎上リスクを気にする記者は多い。テレビの記者は総務大臣時代の2016年、番組が政治的公平性に欠く放送を繰り返した場合、『停波』を命じる可能性に言及したことを覚えている。扱いが及び腰になるのです」
だが、総裁選で高市氏が安倍氏の熱烈な支持者や岩盤保守層の支持をまとめ、“保守のカリスマ”としての地位を固めつつあるのは間違いない。
それはつまり、総裁選を通じて「高市氏かそれ以外か」の構図が固定化する可能性を孕んでいるということだ。高市氏が勝っても負けても、その先には深刻な党内分断が待っているのかもしれない。
(第3回に続く。第1回から読む)
※週刊ポスト2024年10月4日号
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