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橋爪大三郎氏が指摘 深セン市・日本人児童殺害事件の下地には中国の「反日教育」「行き過ぎたナショナリズム」の存在

NEWSポストセブン / 2024年9月30日 7時15分

あまりにも痛ましい事件だった(深センの現場/写真=共同通信社)

 中国・深セン市の日本人学校に通う男児が殺害されるとい痛ましい事件が起きてもなお、中国のSNSでは日本人憎悪の書き込みが溢れている。中国に関する著書が多数ある社会学者・橋爪大三郎氏は、中国共産党政府の“危うい生存戦略”が、こうした危機的状況を招いたのだと指摘する。

 * * *
 今回の事件の下地には、中国の「反日教育」「行き過ぎたナショナリズム」の存在がある。では、なぜ長年にわたり反日教育が続けられてきたのか。それは、中国共産党が国をまとめる「正統性」を必要としているからだ。

 中国共産党はもはや、共産主義による世界革命を目指していない。それはソ連と対立して米国と国交を結んだ時からはっきりしている。にもかかわらず中国共産党が政権を握り続ける理由が必要になり、その答えがナショナリズムになった。

 それはつまり、“悪い日本を打倒して独立を勝ち取った”という物語だ。

 中国共産党は半植民地状態から日本軍を打倒して独立を達成し、中華人民共和国をつくった。実際にはその間、中国共産党が日本軍から資金提供を受け、情報を提供して国民党を攻撃させていたのだが、その歴史はなかったことにして、「中国共産党は一貫して日本と戦い、中国のナショナリズムのために正しいことだけをやりました」と見せようとしている。

 それが反日教育の中身であり、つまりは嘘だ。でも、嘘も百遍言うと本当になる。

 そうした教育しか知らないのが、今の中国の成人の大多数になった。すると「日本に反対するのは正しく、許される」という感覚が生まれ、今回の事件のようなことを実行する人も出てくる。

 中国共産党の願望、戦略から生み出された「中国ナショナリズム」は、非常に危うい。

米国などに比べ日本政府の認識は甘い

 そして、明確な反対勢力が中国内にはないから、こうした中国の異様なナショナリズムは外国がコントロールするしかない。

 米国は、中国吉林省で4人の自国民が地元の男に刺され負傷する事件(6月)を受けて、駐在員や家族を引き揚げたり、資本提携を解消したり、投資をやめたり、中国との関係を断つ方向に超党派で動いた。

 それに比べて日本政府の認識は甘い。駐在員の家族を引き揚げさせるというのは最低限のこと。できるなら取引先を中国以外に付け替えるくらいしなくてはならない。

 今回の10歳の少年の犠牲は、非常に無念だ。だからこそ、この事件をきっかけに、日本はこの中国共産党政権の本質的な危険性をきちんと認識し、対応しなければならない。

【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年、神奈川県生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。著書に『おどろきの中国』(講談社現代新書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』『一神教と戦争』(ともに集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)など。近著に『火を吹く朝鮮半島』(SB新書)。

※週刊ポスト2024年10月11日号

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