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哲学研究者・永井玲衣さん、最新エッセイ集を語る「哲学とは『よく見ること』。常に同時代の中で見えてくるものに呼応するように書きたいし、書かざるを得ない」

NEWSポストセブン / 2024年10月7日 16時15分

 それぞれの章に、寺山修司や穂村弘、東直子、岡野大嗣といった人たちの短歌や詩の言葉が引用されているのも印象的である。

「書きながら気づいたことですけど、自分は哲学の言葉以上に詩と文学に育てられたという意識が強いんです。『世界の適切な保存』の最も巧みな保存者のひとりとして、詩人の言葉は必然的に出てきましたね。ルールとして毎回入れよう、とかじゃなく、これも自然に入ってきちゃった感じです」

 10代のときからずっと、気になった言葉を書き留めることを続けてきたそうだ。

「『写経』って勝手に呼んでるんですけど、これはというものをひたすら書き写しているノートがあります。手書きもしていますし、いまはパソコンのエバーノート(アプリ)にも入れています。エバーノートは検索機能があるのですごく便利です。つらつら見ながら、いつか書きたいといつも思っているので、自然にすっと言葉が出てきますね」

 短歌や詩の言葉に思いがけない角度から光が当てられると、言葉が現実とつながり、新たな扉がとつぜん開くような読書体験ができる。

誰もが考え、誰もが問いを持っている

 永井さんがずっと続けているという「哲学対話」についても聞いてみたい。問いを出し対話を重ねて考えを深める営みで、小学校で子どもを相手にすることもあれば、企業に招かれて話すこともある。

 日本の企業が哲学者を招いて対話する時間をもうけていること自体が意外だった。

「『誰もが考え、誰もが問いを持っている』と私は思っていて、哲学をできる人とできない人がいるわけではない。それなのに自分が考えていることは話しても仕方ないとか面白くないと、なぜ思わせられているんだろう。そのことをずっと問題意識として持っていて、もっと話せる場を作らないといけないと、活動の軸として続けてきたのが『哲学対話』です。

 もちろん、『Googleが哲学者を雇っているらしいから』みたいな、バリバリ、ビジネスの文脈で呼ばれて、お互い『なんか違いますね』ってなったこともあります(笑い)。出会い損ねる経験は偶然性が面白いので、そういうのはまたすぐ書いちゃいますけど」

 哲学は「よく聞く」ことでもあるという。「哲学対話」を2時間やるとしたら、永井さんは、その場に来た人がどんなことを不思議だと考え、モヤモヤしているかを聞き取る「問い出し」に1時間かけるそうだ。

「十数年、『哲学対話』の活動をしていて、『問い』がぜんぜんかぶらないんですよ! これって驚異的だと私は思うんですけど、すごいことですよね」

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