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【千利休の末裔が教える “いつも感じがいい人”の習慣】御礼を言う時に「すみません」と「ありがとうございます」どちらを使うべきか

NEWSポストセブン / 2024年10月13日 11時15分

『木守』の例のように、自然への感謝は他者との分かち合いの心に通じます。小さな島国で自然の恵みをいただき、感謝を捧げてきた私たちは、だからこそ『おかげさまで』という言葉に象徴される礼節を生むことができたのでしょう。そこからは、互いに思いやり、『お先にどうぞ』と譲り合う余裕も育まれました。

 感謝することは、人間どうしが争わず、助け合いながら暮らしていくための最良の心得。人と人とが互いに思いやる心の根底には、自然の恵みに生かされていることへの感謝、他者への感謝があることを、忘れてはいけないと思うのです」

「ありがとう」は相手の心配りへの返答

 道を歩いていて落とし物をした時、後ろを歩いていた人が拾って手渡してくれたとしたら、とっさに「ありがとうございます」とお礼を口にする人はどれくらいいるだろうか。助けてもらった時、お世話になった時、何かを教えてもらった時、むしろ「すみません」と言ってしまうほうが多いかもしれない。

「それはそれで、相手の労をねぎらい、時間を費やしてもらったことへの謝罪の気持ちを表しているという意味で、日本人らしい美徳かもしれません。『ありがとう』という言葉をストレートに口にするのが、気恥ずかしいという気持ちもわからないでもありません。ただ、だからこそふだんのやりとりの中で『ありがとう』という感謝の気持ちを持ち、言葉として伝えることは大きな意味があると思うのです。

 茶席でも、招いた客に対し、最大限のもてなしを準備してお迎えし、『ようこそお越しいただきました。ありがとうございます』と礼を述べます。逆に客側は、『本日はお招きいただき、ありがとうございます』と招待に対する感謝を述べ、自分のために用意された茶席のしつらいを五感を研ぎ澄ませて拝見します。

 そして、もてなしの真意を推し量り、時間をかけて支度をしてくれたことに対して、あらためて礼を伝えます。このように、主人と客が互いに相手の心配りをたたえ合うのです。感謝の気持ちを言葉にして伝えること、これは、相手の心配りに対して、きちんとそれを受け取りましたという表明でもあるのです」

 日本という国に生まれて身につけた美徳であり心得でもある「感謝を伝える」という行為。われわれ日本人が人間関係を築くうえで大事にしてきた考え方だ。

(第3回に続く)

【著者プロフィール】
千 宗屋(せん・そうおく)/茶人。千利休に始まる三千家のひとつ、武者小路千家家元後嗣。1975 年、京都市生まれ。2003 年、武者小路千家15 代次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名し、同年大徳寺にて得度。2008 年、文化庁文化交流使として一年間ニューヨークに滞在。2013 年、京都府文化賞奨励賞受賞、2014 年から京都国際観光大使。2015 年、京都市芸術新人賞受賞。日本文化への深い知識と類い希な感性が国内外で評価される、茶の湯界の若手リーダー。今秋、「人づきあい」と「ふるまい方」を説いた書籍『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。一児の父。Instagram @sooku_sen

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