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【拉致問題解決への祈りは続く】さかもと未明さんが振り返る「横田夫妻との交流」と「バチカン枢機卿からの言葉」

NEWSポストセブン / 2024年10月14日 16時15分

 逡巡する私を、枢機卿は励ましてくださる。

「まず自分を心地よい状態にしてください。そして、誰に対してもよい関係でいられるようにしてください。うまくやれる可能性がないとしても、親、親戚、友達、誰に対しても、友情をもって接する努力をすべきです」

 確信をもって迷わずにおっしゃる枢機卿の姿に心を打たれる。私は聖書についての勉強を続けていたが、聖書が説く「愛」とは、実に難しいことだと考えてきた。しかし、枢機卿は迷わずに、「友情をもって接する」ことが大切だという。

「いつか神が天で引き合わせてくれます」

 私は言った。

「バチカンで歌うまで、一部のプロテスタントとカトリック教会に深い確執があることも知りませんでした。自分が辛い経験をしたからこそ、あらゆる宗派が手を結んでほしいと真剣に望みます。ただ、難しいと感じます」

 言葉で「愛」を語るのは甘美だが、その実践は難しい。拉致問題が解決されるべきは勿論だが、戦争の終結が難しいように、対話の困難さがその解決を不可能にしている。

 私の瞳が迷いで曇るのを見て取ったのか、枢機卿は続けた。「この大聖堂に祀られる聖パウロも、様々に分かれたキリスト教の宗派が一つになるべきだと説きました。私たちは、何よりも互いに対し誠実であり、親切であることが大切なのです。過去に私たちは分かれて対立していましたが、今世界は少しずつ融和に近づいています。私たちは互いが兄弟のようにつながる世界を実現しなくては」

 枢機卿に私は再び聞いた。

「横田滋さんや、ほかのたくさんの方々が、(子供を取り戻したいという)道半ばで、亡くなりました。でもその魂は安らかであってほしいし、いつか天国で出会えますよね?」

 枢機卿は、はっきりとした口調で言った。

「ミスター横田は今生では娘さんとの再会はかないませんでした。でもいつか神が天で引き合わせてくれます。この地上で私たちが心を一つにすることは今は不可能でも、天の世界では可能なのです」

 深い言葉だ。斜に構えれば、「平和は現実には不可能だ」とも聞こえる。でも諦めたら、かりそめの平和や停戦、国交回復や拉致問題解決も永遠に解決しない。先日、総裁選前の石破氏に会った時、拉致問題について「表座敷で対話すること、また日本独自で取り組むことが大切です」と言ってくれた。新政権での解決を強く願う。

 絶対不滅なものもまた地上にはない。だから解決だってありうる。そう私は信じて歌い、書き、描き続けよう。横田滋さんの娘を思う気持ちは今も響いている。さざ波はいつか大きなうねりとなる。一人の父親の人生は、いつか歴史を変える大きな波にさえ成り得るだろう。

【PROFILE】
さかもと未明(さかもと・みめい)/1965年、横浜生まれ。1989年に漫画家デビューし、多方面で活躍するも2006年に膠原病を発症し、その後、活動を休止。一時期は余命宣告も受けた。手が動かない時期に歌手活動を開始。2017年には吉井画廊で画家デビュー。北朝鮮による拉致被害者の救済活動にも積極的に取り組んでおり、2018年にはバチカンの聖マリア・マッジョーレ大聖堂で拉致被害者の帰国を祈り『青い伝説』を、2024年はに聖パオロ大聖堂で『はな』を歌唱している。

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