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【千利休の末裔が語る“いつも感じのいい人”の習慣・第5回】心を掃除することで人生が整う、茶人・千 宗屋の『きれい好き』の教え

NEWSポストセブン / 2024年11月9日 11時15分

「私が修行先の比叡山延暦寺で習った教えに、『信は荘厳(しょうごん)より生ず』というものがあります。荘厳とは、仏様やお堂を清潔にし、お供え物をして美しく整え飾り立てること。そこには僧侶のたたずまいや衣の美しさ、清潔さ、さらに読経の声や所作の美しさも含まれます。それらがすべて美しく整い荘厳されることで、見ている人は難しい教えやお経はわからなくても、なんとなくありがたいという気持ちになり、自然と手を合わせたくなる。それが信心をすることの第一歩になる。ゆえに掃除や整理整頓、身だしなみは怠ってはならないというものです。

また茶の湯の平点前(ひらでまえ 基本の点前)では、湯だけ沸いた釜以外は何もない座敷に、一から道具を持ち出し、最も使いやすい位置に置き、茶を点て終えたら、最後にすべてを持ち帰って何も残しません。必要なものを使いやすい位置に置き、使い終えたらもとの場所に戻すという、片づけの基本が自然な流れの中で行われます」(千氏)

能に凝縮された引き算の美学 

これは能楽の様式にも通じるという。

 「何もない舞台に囃子方(はやしかた)や地謡(じうたい)が現れ、作り物が運び込まれ、そして能の役者が現れて物語を演じ、演じ終えたら巻き戻しのようにすべてが舞台裏へと消えていきます。こうして夢幻のひとこまを観客に見せているのです。これぞ日本に伝わる引き算の美学です。

 必要最小限の物を、あるべきところに収め、必要な時だけ使いやすく置き並べ、使い終わったら、もとの場所に戻す。これだけをきちんと守れば、整理整頓はごく簡単なことではないでしょうか。

 忙しさにまぎれて、常に行き届いた掃除ができないという場合は、自宅にお客様を招きましょう。来客に心からくつろいでもらうために、ふだんは手を抜いているような場所もくまなく美しく整えるための絶好の機会になります。掃除の際は、相手の立場に立って、初めて見るような気持ちで自宅を見直してみると、それまで目につかなかった汚れや乱れが発見できることでしょう。部屋の整理整頓や掃除と同時に、心の清浄も心がけたいものです」(千氏)

お茶を点てるには、まっさらな茶巾だけあればいい

 「茶の湯に関連した古いお話をひとつご紹介しましょう。ある時、千利休に、面識のない地方のお金持ちが大金を送りつけ、『茶道具一式を見繕って送ってほしい』と言ってよこしたことがありました。そこで利休がどうしたかというと、その大金をすべて使ってまっさらな麻布を購入し、送り返したのだそうです。利休の真意は、『お茶を点てるのに必要な道具とは、まっさらで清潔な茶巾(ちゃきん 茶碗などを拭き清める麻布)だけあれば十分だ』というもの。ことほどさように、清潔であることは、折り目正しさ、美しさ、相手に対する心づかいなど、すべてに通じる要素なのです。

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