江戸時代の吉原遊郭に学ぶ「モテる男」「モテない男」の境界線 自慢話や“おやぢ”はNG、身分の高さより羽振りの良さ…モテ要素には現代と共通点
NEWSポストセブン / 2024年11月24日 11時15分
紳士的にその場を収めることができてこそ、「粋」に至ることができるのだ。
「箕山は遊廓で“モテる客”の特徴を、周りを見渡せる視野の広さとユーモアのセンスを持って争いを仲裁できることと書いているわけです。目の前の遊女だけでなく、周りの遊女に気配りできることも重要視しています。さらには“俺がやってやった”という図々しい気配りや余計なおせっかいは野暮で、あくまで爽やかに自然に振る舞うことが粋なのだと強調しました」
史料には28段階の分類がすべて詳細に残っているわけではないというが、「野暮」と「粋」の解説だけでも、江戸時代に限らず令和にも通じる教訓が見いだせそうだ。
「おやぢ」も嫌われた
井原西鶴が著わした『吉原つれづれ草』のなかで“嫌われる客”として例示されるのが、「おやぢ」である。
「当時の『おやぢ』は“老いた客”を意味しました。ただし江戸期は人生50年ともいわれ、40歳を過ぎたら『おやぢ』と呼ばれたようです」
そんな「おやぢ」の特徴について、『吉原つれづれ草』ではこう解説されている。
《老いた客は物事に気力が衰え、それでいてくどくどと益のないことを繰り返し言ったり、だらだらとしてのろく、淡泊だ》
高木氏が解説する。
「辛辣な言い方ですが、『おやぢ』や老いた客について似た書き方をする遊廓関連の史料は少なくありません。他にも『おやぢ』については“ベタベタしている”を意味する『したるい』との表現も多い。これは年配者の床事情について、苦言を呈していたのかもしれません。とくに『新造』と呼ばれる10代の見習い遊女からは、年の離れた『おやぢ』が嫌われたようです」
一方、モテる客の特徴として、次のような記述も残っているという。
「『色道大鏡』によれば、遊女の苦労を近くで見て理解してくれる同業者、器量がよく髪型や着物などが垢ぬけている役者、ケチなことを言わず太っ腹で、なんでも遊女の好きにさせる博打打ちの人気が高かったそうです。こうした“モテ要素”は、現代も変わらないのかもしれませんね」
興味深いのは、身分制が敷かれた当時の時代背景にあっても、「身分が高い=モテる」わけではなかったことだ。高木氏はこう指摘する。
「結局は先立つものが大事で、お金のない武士より羽振りのよい町人が贔屓にされた、という史料も残っています。とくに吉原の遊女たちは、江戸に参勤交代で来る武士をうまくあしらう気の強さもあわせ持っていたようです」
「全然床に入れない」
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