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【新刊】キャラに寄りかからない推理の端正さが渋い極上品 東野圭吾『架空犯』など4冊

NEWSポストセブン / 2024年11月27日 7時15分

政治家と元女優のセレブ夫妻が殺された。過去の層を剥がして五代刑事が辿り着く真相

 日に日に寒さが増している。温かい飲み物でも用意して、室内でゆっくりと読書を楽しんでみてはいかがだろう。おすすめの新刊を紹介する。

『架空犯』/東野圭吾/幻冬舎/2420円
 火事になった豪邸から都議の藤堂と妻で元女優の江利子の遺体が発見される。無理心中に見えたが、すぐ偽装だと判明。五代は所轄の山尾警部補と組んで捜査を進める。早めに容疑者が逮捕されるも、のらりくらりと自供する容疑者を、五代が足で稼いだディテールで反証的に追い詰めていく過程がスリリング。シリーズ2作目。キャラに寄りかからない推理の端正さが渋い極上品だ。

『道を拓く 元プロ野球選手の転職』/長谷川晶一/扶桑社/1650円
 アスリートの現役時間は短め。14人のセカンドキャリアの場を訪ねる。保育園、讃岐うどん店、警視庁機動隊、いちご農家、大学、カフェなど、職業図鑑みたいな多様さに目を見張る。選択の動機はそれぞれ。子供大好き、昔から教育者志望、パティシエになって母経営のカフェを応援。子供達にも読ませたい。アスリートって一粒で二度美味しい人生が味わえるみたいだよって。

『ネット怪談の民俗学』/廣田龍平/ハヤカワ新書/1276円
 最近ホラー小説には廃墟や心霊スポットを実況するVチューバーが登場する。物語よりも送り手と受け手で「不穏」を共有するスタイルなのだとか。恥ずかしながら「きさらぎ駅」とか「リミナルスペース」とかチンプンカンプン。それでも面白く読めたのは学者らしく冒頭で全体地図を掲げ、学者らしくない分かりやすい文章で書かれていたから。来年の新書大賞にランクインしそう。

『恋文の技術 新版』/森見登美彦/ポプラ文庫/869円
 能登の実験所に飛ばされた京都の大学院生・守田一郎。希代の文通上手を目指し、恋煩いの親友や女王様気質の女性先輩、兄を尊敬しない妹や、森見登美彦という作家に恋文の教えを請う手紙などを出しまくる。相手の返信内容を織り込んだ一郎の手紙だけでほぼ構成。素直すぎる無礼さと憎めない甘えん坊ぶりに終始笑い転げる。人気のロングセラー作の新装版。楽しいですよ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年12月5日号

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