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《踏切自殺強要事件だけじゃない》無報酬奴隷状態の職場は「存在する」と話す中年男性の告白 会社に生きるすべてを握られ「逃げることは死ぬことと同じ」だった

NEWSポストセブン / 2024年12月25日 16時15分

 似たような事件が相次ぐ中「同じような境遇の人は何千人といるはず」と話し涙ぐむのは、茨城県在住の介護職の男性(50代)だ。

「踏切内に立たされた男性は、最後バンザイのような格好をしていたと報道で見ました。しかも、その様子を見張られていたとまで。直前には、川にかかる橋の上から飛び降りるよう強要もされたといいます。どんな気持ちだったのか。逃げるに逃げられず、最後は絶望の中で亡くなったのでしょうね。給与ももらえず、奴隷のような状況だったはず。私も同じ境遇でしたから、苦しさがわかります」(介護職の男性)

 実はこの介護職の男性も、40代後半まで県内や首都圏の現場を転々とする土木作業員だったが、職場環境は「凄惨」そのものだったと振り返る。

「まず給与は手取り20万ほどですが、そこから会社の寮代が3万引かれる。寮といっても、会社内のプレハブ倉庫なんですけどね。給与は、仕事でミスをすると暴力を受けるだけではなく罰金まで告げられ、同い年の同僚は罰金で給与がマイナスになっていたこともあった。自分より10歳以上若い社長、さらに若い従業員からは叩かれたり、裸にされたりしていました」(介護職の男性)

 つらい状況だったとはいえ、すでに立派な成人男性であれば、その場から逃げ出す、という選択肢もあったのではないか。筆者がそう指摘すると、男性は「生きるためには逃げられない」とうなだれた。

「手に職をつけなかった自分が悪い、といわれればそれまでですが、40過ぎまで建設現場を転々としてきて、気がつけば50歳手前で資格もない。となれば、大手はもちろん、中小建設会社からはお呼びがかからない。そういうわけで、もっと小さな会社、もっといえばモグリの会社に頼るしかなくなる。でもモグリでブラックの会社には、だいたい元不良の社長や上役がいて、我々のような中高年の作業員はいじめられるか搾取される。それでも、自宅も会社借り上げのアパートだし、給与も会社からもらわないと生活できない。生きるためのすべてを会社に握られており、逃げることは死ぬことと同じですから」(介護職の男性)

 その職場でも、複数の中高年作業員が、仕事が遅い、などの理由で給与を取り上げられていた。それどころか、派遣先から支払われた給与の大部分を社長や経営陣が「横取り」もしていた。だが、搾取される中高年スタッフの誰もが「見て見ぬふり」をした。搾取される中高年のうち、やはり数人は、社長などから日常的に暴力を受けたが、みな「冗談」を装った。各々が「自分はいじめられていない」と自分に言い聞かせるように、叩かれても罵声を浴びせられても、金を奪われてもヘラヘラと笑顔を作るのだ。

 ミスをすると叩かれたり給与を減らされるため、皆懸命に働く。だが、ミスして怒られる恐怖にびくついて仕事に力が入らず、当然、注意力散漫になる。そしてまたミスをしてしまい怒鳴られるの繰り返しで、中高年作業員は相次ぎ精神的な不調に陥り、失踪する前に自死を選ぶ仲間もいた。

「頼れる身寄りもない俺らのような中高年にとっては、いじめられても殴られても金をとられても、そこしか無くなっちゃうんだよ。行政にも無視される。卑屈だろうがなんだろうが、生きなきゃいけない。でもそこで死ねって言われたら、もう本当に死ぬしかなくなるのかもしれません」(介護職の男性)

 弱者が救済されない社会になったのか、それとも、弱者が強者に搾取されても見過ごされる社会になったのか。弱者に転落しないために、弱者をつくって虐待を繰り返すのか。この事件が物語るのは、日本社会の闇そのものかもしれない。

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