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藤竜也が明かす倉本聰ドラマ『やすらぎの郷』の舞台裏 「床から胸元まで達するほどの膨大な台本に圧倒されました」

NEWSポストセブン / 2025年1月2日 7時15分

藤竜也が明かす『やすらぎの郷』撮影秘話(写真/テレビ朝日)

 元日に90歳、卒寿を迎える倉本聰氏。同氏が手掛けたドラマ『やすらぎの郷』に出演した俳優・藤竜也がその裏側を明かす。

 海辺の高台にある老人ホーム「La Strada」を舞台に繰り広げられたドラマ『やすらぎの郷』。毎日20分、全129話の連続ドラマは、シニア層を中心に日ごとに評判を呼び、2年後の続編『やすらぎの刻~道』へと続いた。

 入居者のひとりで、任侠映画で一世を風靡した大スター・高井秀次役を演じた藤竜也が振り返る。

「共演した皆さんも会見で話していたけど、なにしろ倉本さんの台本の量が膨大なんです。積み上げると床から胸元くらいの高さになってしまう。1年かけて放送されたドラマですが、台本の厚さを見ると1年をより長く感じるほどでした(笑)」

 秀次は俳優業のほかに、美大卒で数々のコンクールで入選した顔を併せ持つが、自らが描いたある裸婦画がスキャンダルを呼び、芸能活動を休止する役柄だ。少し海外で暮らしたあと、La Stradaに入居してくる。

 圧巻だったのは、La Stradaの入居者を演じた豪華キャスト陣の顔ぶれだ。

 シナリオライター役の石坂浩二を筆頭に、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫、山本圭、ミッキー・カーチス、野際陽子、有馬稲子といった錚々たる役者たちがそろい、それぞれの掛け合いが同作の見どころとなった。

「秀次はどちらかというと寡黙な役でしたが、言いたいことがあれば急に長台詞を喋り出すんです。火が付くと、『女性のシワは美しい』などと語り始める(笑)。『やすらぎの郷』の出演者はみんなそうでしたが、人が聞いていようといまいと、言いたいことをがーっと言う。決して溜めないんですね。でも、これって人生ですごく大事なことじゃないかと思うんです。歳を重ねることはもっと自由でいい、そんなメッセージが込められた素晴らしいドラマだったと思います」

 介護や認知症、死といったテーマを正面から扱い、テレビ批判のメッセージも込められた同シリーズでは、老人ホーム内での恋愛も描かれた。

「松原智恵子さんが演じた九重めぐみが、秀さんに好意を抱く設定でした。松原さんとは、任侠映画『侠花列伝襲名賭博』で恋仲を演じて以来、久しぶりにご一緒しましたね。

 任侠映画に出ていた僕の経歴が秀次に投影されているように、松原さんも他の皆さんも、倉本先生は役者のキャラクターを登場人物にどこか投影させている。だから、楽しんで演じられました」

【プロフィール】
藤竜也(ふじ・たつや)/1941年8月27日生まれ、北京出身神奈川県育ち。1962年に映画『望郷の海』でデビュー。1973年、ドラマ『時間ですよ』で注目を集めると、1976年には映画『愛のコリーダ』で報知映画賞主演男優賞を受賞。

取材・文/一志治夫

※週刊ポスト2025年1月3・10日号

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