1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

『名探偵津田』『10年観察』に続く『正解は一年後』、テレビディレクター・藤井健太郎氏が支持される背景 

NEWSポストセブン / 2024年12月30日 7時15分

視聴者の支持を集める番組を手がけているTBSテレビのディレクター・藤井健太郎氏(インスタグラムより)

 視聴スタイルの変化や、ネット動画配信サービスの台頭、コンプライアンス重視の傾向が強まるなど、バラエティ番組を取り巻く状況は一変している。そんななかでも多くのヒット企画を連発し、視聴者の支持を集める番組を手がけているのが、TBSテレビのディレクター・藤井健太郎氏だ。なぜ藤井氏は支持を集めるのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。 

 * * * 
12月30日23時40分から『クイズ☆正解は一年後 2024』(TBS系)が放送されます。 

 同番組は「1月に『今年起こりそうなこと』をクイズ形式で予想して収録し、年末の生放送で答え合わせする」という未来予想型の年間振り返り特番。2013年から毎年12月30日の深夜に生放送され続け、1年をかけた時間と手間のかかる企画がウケています。 

「毎年決まった日時に放送される年末特番」「1年間を振り返る年末特番」が壊滅状態の中、『正解は一年後』は「唯一かつ真の年末特番」という声があがるなど、業界内での評価は高まる一方。特に番組を手がける藤井健太郎さんへの称賛が集まっています。 

 その藤井さんは18日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)「名探偵津田」で視聴者からも称賛されたばかり。さらに11月27日にも、田村淳さん、千原ジュニアさん、有吉弘行さんの長期密着ドキュメンタリー『淳×ジュニア×有吉 40歳-50歳~10年観察~』が話題を集めたのも記憶に新しいところです。 

 ドラマの脚本家、演出家、プロデューサーはフィーチャーされやすい一方、バラエティは「誰が作っているか知らない」のが普通の中、藤井さんはその名前で視聴者を集められる唯一無二の存在と言っていいでしょう。では、どんなところが支持されているのでしょうか。 

労を惜しまぬエンタメ至上主義 

 藤井さんが支持を集める最大の理由は、面白さ優先の制作スタンス。 

 番組制作がビジネスである以上、目先の視聴率を取ることを優先するのが当然の中、藤井さんは「より面白いほう」を選択できることが称賛を集めています。実際、「名探偵津田」は1週前の放送でいきなりコーナーがスタート。予告なくはじまったことで視聴者を喜ばせ、さらに2時間スペシャルでたっぷり楽しませました。 

 ドキュメントの『淳×ジュニア×有吉』もギリギリまで予告せず、密かに撮り続けていたことが驚きを呼びましたが、そのエンタメ至上主義を思わせるスタンスが「視聴者ファースト」という印象につながっています。 

 また、「面白さのためなら時間と手間を惜しまない」ところも支持を集める理由の1つ。 

『正解は一年後』も他の作り手ならせいぜい1週間後の未来を予想する程度の番組に留まっていたでしょう。しかし、藤井さんはそれを1年間の振り返り特番で企画し、1年前から収録し続けています。『水曜日のダウンタウン』の「名探偵津田」も複数のロケを惜しまず、たっぷり時間と手間をかけていますし、『淳×ジュニア×有吉』に至っては「10年間に密着する」という先の見えない企画であり、労を惜しまない藤井さんの真骨頂と言っていいでしょう。 

 そしてもう1つ、藤井さんにふれる上で忘れてはいけないのが、苦情を恐れず毒をふんだんに盛り込んだ企画・演出。常に「やりすぎ」「不適切」「いじめ」と紙一重のところまで踏み込んだ企画を選び、演出していて、何度か批判や苦情を受けながらもそのスタンスは変わりません。 

 手がける『水曜日のダウンタウン』『オールスター後夜祭』『クイズ☆正解は一年後』は、いずれも悪意混じりの構成や出演者コメントが目白押し。「これは大丈夫なのか?」と思いながらも笑わせながら見せ続けたことで、すでに「この番組だからいいのかな」という段階に入った感すらあります。 

 もちろん藤井さん自身それを熟知していて、プライム帯の『水曜日のダウンタウン』では「ギャラクシー賞」と「BPOの審議入り」のどちらにも該当しうるような企画を織り交ぜ、深夜帯の生放送である『オールスター後夜祭』『クイズ☆正解は一年後』では大喜利の要素を盛り込むことでほどよく悪意をやわらげています。 

「配信再生数トップ」を独走状態 

 藤井さんがかつて手がけた番組に目を向けると、2010~2012年放送の『クイズ☆タレント名鑑』と2016~2017年放送の『クイズ☆スター名鑑』は視聴者評価が高かったにもかかわらず、視聴率の低迷で終了してしまいました。 

 ただ、2020年代に入ると「主に10~40代の個人視聴率がどれくらい取れるか」などの指標が重視され、さらにTVerの配信再生回数も評価対象になるなど状況が一変。特に後者では『水曜日のダウンタウン』が「TVerアワード バラエティ大賞」を3年連続受賞するなど、配信再生の強さは圧倒的であり、藤井さんへの評価を盤石なものにしました。 

 しかし、その間も藤井さんらしい面白さ優先の制作姿勢は変わらず、時代や業界が追いついてきたという感があります。たとえば終了した『クイズ☆タレント名鑑』の中で面白い企画はリニューアルさせつつ別の番組で続けて、「やっぱり面白い」と再評価されていることもその1つでしょう。いずれにしても「いかに視聴者を笑わせるか」という軸は変わらず、それがファンを大切にすることにつながっています。 

 最後に話を『正解は一年後』に戻すと、定番の「今年離婚する芸能人は?」などのクイズから、この番組と知らずに視聴者が参加していた1年がかりの企画まで、今年も笑いと驚きを詰め込んだものになるのでしょう。 

 制作費の削減などから、年末年始ですらレギュラー番組の特番ばかりになり、特にこの時期だけ放送される一年の振り返り特番は激減しました。だからこそ『正解は一年後』の希少価値は増していますが、色気を出して22時台などに繰り上げさせず、深夜帯に留めているところに藤井さんの矜持が感じられます。 

 引いてはそんな藤井さんを認め、一定以上の自由を与えて続けてきたTBSの功績も大きいでしょう。藤井さんは今年7月に部長待遇から局長待遇への昇格が報じられましたが、功績への評価だけでなく、重要な人材を流出させないための人事にも見えました。 

 近年ではDMM TVやAmazon Prime Videoでの配信番組も制作していますが、「表現の幅がせまくなった」「似たようなバラエティばかり」と言われる地上波で藤井さんの番組はやはり貴重。それだけにこの1か月あまりの活躍はファンたちを喜ばせるものだったのです。

【木村隆志】 
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください