【新刊】透析患者の夫を看取った堀川恵子氏が矛盾だらけの透析医療現場を歩くノンフィクション『透析を止めた日』など4冊
NEWSポストセブン / 2025年1月29日 7時15分
1月が終わってもまだまだ寒さが続く。こんなときは、暖かい部屋のなかで本を読み、インプットに勤しんでみては。おすすめの新刊を紹介する。
『キミコのよろよろ養生日記』北大路公子/集英社/1870円
キミコさんは術後の化学療法の副作用で根こそぎ体力を奪われる。階段は登山であり、ラジオ体操をすれば息も絶え絶え。編集者から送られてきた伊能忠敬の万歩計や縄跳びで、体力回復に励む。この間に母上を看取ることにも。編集者2人にしぶしぶ付き合った仕上げの藻岩山登山後のビールの美味しいこと。『失われた時を求めて』のマドレーヌより、はい、やっぱビールですよね。
『透析を止めた日』堀川惠子/講談社/1980円
大宅ノンフィクション賞受賞の場に著者は透析中の夫(NHKの敏腕制作者・林新氏)の元から駆けつけた。夫は実母からの移植腎で9年の小康状態を得るも2016年透析再開、翌年逝去。夫婦の闘病&愛情物語が前半で、後半では矛盾だらけの透析医療現場を歩く。腹膜透析という選択があったとは。車で送迎し難いという理由でその病院を避けた。深い悔恨を感じ胸が詰まった。
『財布は踊る』原田ひ香/新潮文庫/781円
発覚したダンナの無自覚なリボ払い(=高金利の借金)、金融商材などに騙される若い男達の一攫千金の夢、1円も貯金できないアラサー女性達の奨学金返済地獄など、虫瞰ではお金に人生を左右される人々の群像小説で、鳥瞰ではヴィトンの長財布が旅するリレー小説だ。ゴクゴク読めるのは、どの人物にも著者が寄り添っているから。原田さんのマネー小説はやっぱり面白い。
『ときどき、京都人。』永江朗/小学館文庫/682円
京都にも家を構えることにしたのは茶の湯を極めるため。町家を買い、1年かけて改装。月に7日から10日ほど滞在し、町名を記すホーローの看板の歴史や、京都がパンの街でもあったことなど、街歩きのトリビアを愉しむ。が、最後に思いがけない転生が。満月の鴨川の土手で足を滑らせアキレス腱断裂。通い京都人をやめ、定住の道を選ぶのだ。野菜と豆腐の美味しさが羨ましい。
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年2月6日号
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