美智子さま、約28年ぶりの歌集で明らかになった「拉致被害者への秘めたる思い」 “忘れてはいけない”31音に込められた静かな祈り
NEWSポストセブン / 2025年2月4日 7時15分
美智子さまが、約28年ぶりに歌集を刊行された。ご自身がこれまでに詠まれた御歌から選ばれたのは、「皇后」というお立場を退かれたいまだからこそ世に送り出すことができる、美智子さまの「個人的で率直な思い」が綴られた御歌だった。
数年前までは新年恒例の宮中行事のため、ご多忙を極めた1月を上皇ご夫妻は穏やかに過ごされた。おふたりは、日課であるお住まいの散歩や本の音読、上皇さまのライフワークであるハゼの研究などに励まれている。その傍らで、美智子さまは1月15日、長年詠み続けてこられた短歌をまとめた歌集『ゆふすげ』を刊行された。
「昭和と平成の時代に詠まれた全466首が収録されています。歌集にはタイトルに取られたゆうすげの花にちなんだものや、公務で出会った人々や上皇さま、ご家族への思いを詠まれたもののほかに、その時々に起きた社会事象について美智子さまが抱かれた気持ちを表された作品が収められています。なかでも、日本社会を騒然とさせた、昭和、平成にわたるあの大事件については強い悔恨を御歌に込められました」(宮内庁関係者)
美智子さまは幼い頃からお歌に親しんでこられた。
「美智子さまは小学生の頃からお歌を詠まれていたそうで、上皇さまとのご成婚前には、1日1首を詠む『百日の行』を実践され、腕を磨かれました。その後も、公務の合間を縫ってハイペースで詠まれてきたので、歌会始などの行事や歌集などでも世に送り出せなかったお歌がたくさんあったのです。今回の歌集に収められたのは、すべて未発表のものです」(皇室記者)
美智子さまが初めて単独で歌集を刊行されたのは1997年のこと。『皇后陛下御歌集瀬音』と題され、著者は「皇后陛下美智子さま」とされているが、表紙に美智子さまの名は記されていない。しかし今回は表紙に「美智子」とご自身の名を刻まれた。
「この本は“バイアス(先入観)をかけずに読者に届くように”という思いのもと、『美智子』のお名前で出版されることになったそうです。つまり、歌集に掲載されているお歌はご自身の名を冠してどうしても世に送り出したかったもの。実際に、ご両親やほかの皇族方、被災地など、美智子さまが特に大切になさっている事柄を詠んだものが多く掲載されています。なかでも目をひくのは、北朝鮮による拉致の被害者について詠まれた3首の短歌です」(前出・皇室記者)
たとえば、
〈言の葉の限り悲しく真向かへばひたこめて云ふ「お帰りなさい」〉
という短歌は、2002年10月、北朝鮮から日本に帰国した5人の拉致被害者を思って詠まれたものだ。
「美智子さまはこの御歌を詠まれた2003年に、新潟県を訪問されました。拉致被害者の蓮池薫さん、祐木子さん夫妻と面会された美智子さまは、ふたりに『お帰りなさい』と声をかけられました。そのときのお気持ちをこの御歌に込められたのではないでしょうか」(放送作家のつげのり子さん)
2004年5月には、2002年に帰国した拉致被害者の家族5人が、北朝鮮から日本に帰国。彼らのその再会に、
〈五月なる日の本の地に来し子らのその父母とある夜を思ふ〉
と思いをはせられた。
まだ日本に戻れない拉致被害者のことも常に心に留めてこられた。2006年に詠まれた、
〈少年のソプラノに歌ふ『流浪の民』この歌を愛でし少女ありしを〉
という御歌がある。
「ウィーン少年合唱団の歌を鑑賞された際に、歌が上手だったという横田めぐみさんを想起されてお詠みになったそうです。『流浪の民』は住まいを転々とする民族を描いた歌。いまだ故郷に戻れないめぐみさんの心情を重ねられたのでしょう」(前出・皇室記者)
これまで、拉致被害者やその家族に対する美智子さまの率直な思いが織り込まれたお歌が表に出たことはなかった。
「美智子さまは時事性の高い話題を短歌として詠むことに長けていらっしゃいますが、お立場上、国際的な社会問題に現在進行形のタイミングで言及するのは難しかった。それでもあふれる思いをお歌にしたためずにはいられなかったのでしょう。今回の歌集で、美智子さまの拉致被害者への秘めたる思いが明らかになりました」(前出・皇室記者)
拉致問題はまだ終わっていない
北朝鮮による日本人拉致が始まったのは、美智子さまが皇太子妃でおられた1970年代のこと。その拉致事件が実際に全国区で知られるようになったのは、美智子さまが皇后になられて10年近くが経過した1990年代後半に入ってからだった。そして2002年、ようやく被害者の一部が帰国した。
皇族方は毎年、ご自身の誕生日に文書でお言葉を寄せられる。美智子さまは2002年の文書で、「悲しい出来事についても触れなければなりません」と前置きしてから拉致被害者の問題に言及され、「驚きと悲しみと共に、無念さを覚えます」「何故私たち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識し続けることが出来なかったか」と述べられた。
「皇族方は憲法の定めにより、政治的な問題に対して立ち入った論評をすることを避けてきました。『皇室は祈りでありたい』と考えられてきた美智子さまが、ここまで政治的な問題に切り込む発言をされたことに驚きの声が上がりました。なぜもっと早く国民の悲しみを知ることができなかったのかという後悔が、皇后としてのお立場を上回ったのでしょう。
また、美智子さまは、横田めぐみさんの母、早紀江さんと1学年差で、同世代の娘もお持ちです。母として抱かれたやり場のない怒りや、やるせなさもあったのかもしれません」(皇室ジャーナリスト)
その後、拉致被害者の新たな帰国はないが、美智子さまは、折に触れて声を上げ続けられ、皇后として最後に綴られた2018年の誕生日文書では、これからも国内外の出来事に心を寄せ続けたいと述べられた。そこで挙げた唯一の具体例が、拉致被害者の問題だった。
「美智子さまも拉致被害者もその家族も、みな等しく年を重ねます。生きて再会したいと願う人たちのタイムリミットは迫りつつある。それどころか、すでに亡くなった方もいます。美智子さまご自身が『忘れてはいけない』と胸に刻まれていらっしゃることはもちろん、国民の意識の中でも風化させてほしくないという思いがあるのでしょう。拉致被害者の問題はまだ終わっていないという切実な思いが、今回の選歌に込められているように感じます。
美智子さまは、令和への御代がわり以降も短歌を作り続けていらっしゃるという話も聞きますから、これからもご自身の祈りを31音に込められるのではないでしょうか」(前出・皇室記者)
美智子さまがお歌に紡がれた思いは、いつ実を結ぶのだろうか。
※女性セブン2025年2月13日号
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