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追悼・吉田義男さん 400勝投手・金田正一さんも「あのチビだけは手こずった」「バットを持ってしゃがむから、ストライクになりゃせん」と苦手意識を嬉しそうに語っていた

NEWSポストセブン / 2025年2月6日 11時15分

400勝投手の金田さん(左)も、吉田さん(右)には苦手意識があったという

 2月3日、阪神タイガースを監督として球団史上初の日本一に導いた吉田義男さんが91歳で亡くなった。他の内野手との素早い連携が求められることから「守備の要」と称される遊撃手で日本最多となる9度のベストナインに輝く守備の達人だが、阪神では球団3位となる1864安打を放ち、球団2位の350盗塁、球団最多の264犠打の記録を持つ打撃の人でもあった。

 そんな吉田さんを超苦手にしていたのが「カネやん」こと400勝投手の金田正一さんだった。吉田さんの通算成績は打率.267、本塁打66本でありながら、金田さんには打率310、本塁打8本という通算対戦成績を残している。

 金田さんは「スピードガンがない時代だったが軽く投げて160キロ台だった」としながらも、「あのチビだけは手こずった」と話していた。阪神OBの安藤統男さんが今回の吉田さんを偲ぶコメントのなかで「打撃では金田(正一)さんとの相性が抜群だった。(中略)球界最高峰のエースから『こら、チビ!』とドスの利いた声で威嚇されていたのは、何よりの勲章だろう」(スポーツ報知)と語っている。

 金田さんは身長167センチの吉田さんを「チビ」と呼んでいたが、それは敬意を表してのことだった。だから吉田さんのことを話すカネやんは嬉しそうだった。

「あのチビな(笑)。ワシの球は伸びていくんだから、あんなチビにはストライクにはならん。それにあいつはしゃがむんじゃ。チビがバットを持ってしゃがむから、ストライクなんかなりゃせん。マウンドから“立って打て”と怒鳴ったもんじゃ。

 阪神は吉田ぐらいしか大したヤツがおらんから1人ぐらい出してもどうってことがないと思ったが、あれだけは困ったなぁ。真っ直ぐはボールになるから、カーブしか投げられん。するとカーブを待ってうまく打ちよるんじゃよ。サヨナラヒットを打たれた記憶もあるが、巨人阪神のOB戦までラッキーゾーンにホームランを打ちやがった(苦笑)。往生こいたで」

吉田さん本人が嬉しそうに語った「平凡なセンターフライがサヨナラ二塁打に」の記憶

 拙著『巨人V9 50年目の真実』(小学館)の取材でインタビューに応じていただいた時に、この話を吉田さんにぶつけたことがある。吉田さんもまたカネやんの話をする時は嬉しそうだった。

「ボクはカネさんを得意にしていましたが、国鉄時代の印象が強いですね。巨人に来てからはカーブばかりでしたが、国鉄の時はストレートしか投げてこなかった。ボクは高目が好きで、高めのストレートをヒットすると、次の打席でも“チビ、もう1回打ってみろ”と打たれたのとまったく同じコースにストレートを投げてくる。それをまた打ち返すと、もう投げてきませんでしたわ(笑)。カネさんは背が高いし、ボクは小さかったから、低目に投げたつもりがちょうどバットを構えたところに入ってくる感じでしたわ」

 金田さんとの対戦で記憶に残っている打席を聞くと、吉田さんはこんな話をしてくれた。

「カネさんとはいろいろありすぎて困りますが、国鉄時代の甲子園での試合ではこんなこともありましたわ。1点を取ればサヨナラ勝ちという場面で、セカンドにランナーを置いてボクが打席に入ると、マウンドのカネさんがセンターの丸山完二に“前を守れ、前を守れ”と指図した。あまりにしつこく言ったので丸山は頭に来たのかセカンドベースの真後ぐらいに守備位置を変えた。

 ボクがカネさんのストレートを打つと平凡なセンターフライが二塁打になってサヨナラ勝ちですわ。国鉄時代はそんなワンマンだったカネさんも川上巨人の下ではチームプレーに徹した。ちょっと面白みがなくなりましたね(苦笑)」

 天国では再会した金田さんと野球談議で盛り上がることだろう。合掌。

■取材・文/鵜飼克郎(ジャーナリスト)

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