《フジテレビ問題が波及》ACジャパンCM連発に募る不満、回数だけじゃないモヤモヤの理由
NEWSポストセブン / 2025年2月9日 7時15分
中居正広の女性トラブルへの対応から“CMボイコット”まで広がったフジテレビに関する問題。フジの番組では依然として、ACジャパンのCMが流れ続けている。視聴者からは「回数」だけではない不満の声が出ている。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景について解説する。
* * *
フジテレビがCMを見合わせている企業に広告料金を請求しない方針を発表したことで自社CMの割合が増えた分、少し減ったものの、今なおACジャパンのCMが大量に放送される状態が続いています。
ネット上の反応を見ていて気になるのは、ACジャパンは公益社団法人であり、公共マナー、環境問題、多様性、ネットモラル、災害などの社会的なテーマのCMばかりであるにもかかわらず、放送回数の多さからか、「しつこい」「不快」「流さないでほしい」などの批判があがっていること。
社会的意義を考えると、そのような批判は「大人げないのではないか」とも感じますが、不満の理由を突き詰めていくと、単に「回数が多いから」だけではないモヤモヤの背景が浮かび上がってきます。
放送中の「ACジャパン」CMは13本
現在、フジテレビで流されているACジャパンの主なCMは以下の13本。
1)“決めつけ刑事”の嶋田久作さんがある男性を犯人として決めつけて追い詰めるが、けっきょく冤罪であり、その危うさを問いかけるCM。
2)ライブ中の近藤真彦さんが観客に何度も聞き返すシーンが流れ、「聞き返し、聞き間違いが多くなったら耳鼻科での聴力検査をおすすめします」と語りかける一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のCM。
3)アニメ映像に合せて「アイフレイルは目のサインだよ」という『かえるの合唱』の替え歌が流れ、 「気になったら眼科に相談を」と語りかける公益社団法人 日本眼科医会のCM。
4)なかやまきんに君が「なかやま検脈んです」と語って心房細動の早期発見を促す公益財団法人 日本心臓財団のCM。
5)ゆうちゃみさんが“災害時の持ち出しバッグ”の準備をうながすCM。
6)子どもたちが片付けするシーンが流れ、ごみを分別して地球環境を守ることを訴えるCM。
7)母親が勉強中の子どもに「今は勉強だけしていればいいの。全部あなたのためだから」と語りかけるシーンが流れ、「子どもの精神的幸福度・先進38か国中37位」が表示。「子どもの心を尊重していますか?」と問いかけるCM。
8)松重豊さんが“こども食堂”を訪れ、「みんなの居場所なんだね」と語る認定NPO法人 全国こども食堂支援センター むすびえのCM。
9)アニメ映像が流れ、「家庭の経済事情によって未来を諦めるしかない子どもがいます。学習支援で子どもが夢を描ける社会へ」と語りかける認定NPOキッズドアのCM。
10)アニメ映像が流れ、「スタートラインはみんな同じだと思ってた。頑張ってるのに一生追いつけないのかな。私は未来を選べないんですか」と語りかけ、無料学習会やオンライン学習会などで支援する認定NPOキッズドアのCM。
11)映画『すずめの戸締まり』のアニメ映像が流れ、「親を失った子どもたちを応援したい。がんばれ全国のすずめたち」と語りかける、あしなが育英会のCM。
12)有村架純さんが「女の子だから学校へ通わせてもらえなかった。救われた人は救う人になる」と語りかける公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパンのCM。
13)江口洋介さんが「東南アジアで子どもたちを救う。その経験は日本の子どもたちを救うことにもつながっている」と語りかける特定非営利活動法人 ジャパンハートのCM。
「過半数が子ども絡み」という偏り
前述した7~13はすべて子ども絡みのCMであることに気づいたでしょうか。
つまり13本中7本が子ども絡みのCMであり、2本に1本以上の高い割合を占めていることになります。あまりに「子ども」「子ども」と言われると、特に子どものいない家庭や独身者にとってはストレスを感じてしまうこともあるのでしょう。
また、子どものいる家庭にとっても歓迎すべき内容ばかりではありません。たとえば、7番の勉強と幸福度を関連付けたCMは、勉強が好きな子どもや受験に意義を感じている親にとっては納得のいかないものかもしれません。特に現在は受験シーズンだけに「子どものやる気を削ぐな」という不満があがるのも仕方がない感があります。
もともと子どもがかかわるテーマはセンシティブなところがあり、CMに限らず放送の内容、時刻、回数の配慮が必要。「この表現は誤解を受けないか」「この時刻は避けたほうがいいのではないか」「1日○回に留めるべきではないか」などと配慮した上での放送が求められます。その点、現在の放送時刻と回数は多少の誤解を招きかねないものがあり、もう少し客観的な視点からの配慮が必要だったかもしれません。
CMは時間が短い分、意図を伝えることのハードルは高く、誤解を与えているのであれば、それが解消されぬままリピートされてしまうため、不満があがりやすいところもあるのでしょう。さらに内容の偏りに、疑惑の渦中にあるフジテレビへの不満もあいまって、「いつまでACジャパンばかり流しているんだ」という声がしばらくはあがり続けるのではないでしょうか。
企業CMのようなエンタメ性はない
そもそもACジャパンのCMは社会的なメッセージ性が重要なため、ストレートな内容でまじめに訴えかけるものばかりであり、エンタメ性はほとんどありません。一方、企業CMは商品をPRするためにエンタメ性を追求するものが多く、「視聴者に笑い、感動、驚きなどを提供しよう」というサービス精神があります。
制作サイドも出演者も「短い時間でいかにインパクトを与えて記憶に刻むか」を重視していて、世間の人々はそれに慣れているだけに、ACジャパンのCMばかり続くと「つまらない」と思ってしまう人もいるのでしょう。
少なくとも第三者委員会の調査結果発表までは現在の状況が続くことが有力視されているだけに、フジテレビの自社PR、日本広告審査機構、日本民間放送連盟のCMも併せてどのように構成していくのか。通常とは異なるCM編成の配慮が求められていることは間違いないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
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