安倍内閣の「不協和音」は命運を左右する問題には発展しない

NEWSポストセブン / 2013年8月12日 7時0分

 消費税引き上げをめぐる論議が熱を帯びてきた。本来なら与野党の間で侃々諤々の論争が起きて、従来にも増して国会の動きが注目を集めてもおかしくないところだ。

 ところが通常国会は閉幕し、秋の臨時国会まで当分、時間がある。加えて先の参院選では民主党をはじめとする野党が大敗を喫して、いまは敗北の総括と内輪もめで精一杯だ。とても論戦どころではない状況である。

 こうなると、日本経済の行方を左右する大問題であるにもかかわらず、当面は与党内の議論が増税への流れを左右する展開になっている。それは、けっして望ましい状況ではない。だからといって、ないものねだりもできず、メディアは勢い、与党の動きに注目せざるを得なくなっている。

 そのあたりを読売新聞はいち早く「安倍内閣の不協和音が表面化してきた」として次のように書いた。「『法律を決めた時と今とを比べて、悪くなった指標は一つもない。予定通りやらせていただきたい』。麻生氏は23日の記者会見で、こう強調した。(中略)一方、田村厚生労働相は23日の閣議後の記者会見で、『消費税を上げても景気が腰折れし、税収自体が増えなければ本末転倒になる』と述べ、慎重な判断を求めた」(7月24日付)。

 この「安倍内閣の不協和音」というキーワードはこれから当分、流行り言葉になるだろう。野党が負け過ぎた結果、実質的な意味のある政策論議は与党内に絞られてしまうからだ。

 与党内で議論が激しくなればなるほど、外から見れば「不協和音」のように映る。メディアはそれを「不協和音」や「きしみ」、極端な場合には「閣内不一致」と書く。そのほうが記事も面白くなる。メディアはいつだって派手なケンカが大好きである。

 テレビの政治番組担当者が本音を漏らしていた。

「これだけ与党が圧勝してしまうと、私たちはこれからどうやって番組を作ったらいいのか。もはや与野党のケンカは勝負がついたも同然だから、与野党対決で番組を作っても視聴者がついてこない。一番困ってるのは私たちですよ」

 だから「内閣の不協和音」を指摘する記事はこれからどんどん出てくるのではないか。それ以上の面白い政治ネタはないからだ。真っ先に指摘した読売はさすがである。後から書いても、二番煎じになってしまう。

 すると、真の問題は「本当に内閣に不協和音があるのか。そして、それはどれほど重大か」という話になる。

 結論を言えば、不協和音はたしかにある。だが、だからといって安倍内閣の命運を左右するほど重大な問題に発展するかといえば、私はならないと思う。内閣支持率が高く、自民党議員たちは「内輪もめで墓穴を掘るのは、まっぴらご免」と思っているのだ。

 それに実は、麻生vs安倍バトルは日銀総裁人事をめぐって第1ラウンドが終わっている。それは安倍の勝利に終わった。それで2人の間にしこりも残らなかった。最後に麻生が「総理のご判断にしたがう」と引いたからだ。麻生はさすが総理経験者である。

 今回の消費税バトルも収まるべくして収まるだろう。間違っても麻生は最後まで徹底抗戦し、政権基盤を揺るがすようなまねをするはずがない。

 メディアの不協和音記事は間違ってはいないが、あまり真に受けてもいけない。お互い、役割分担しているにすぎないのだ。そのあたりの呼吸を深掘りした記事を読んでみたい。

文■長谷川幸洋(ジャーナリスト):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員、大阪市の人事監察委員会委員長も務める。近著に『政府はこうして国民を騙す』(講談社)。

※週刊ポスト2013年8月16・23日号

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