中村敦夫「キャスターも政治家の街頭演説も演技技術を扱う」

NEWSポストセブン / 2013年8月16日 7時0分

 1972年のテレビ時代劇『木枯し紋次郎』で主役に抜擢され、俳優として世に出た中村敦夫は、その後キャスターに転身、さらに後には参議院議員にもなった。なぜ、さまざまな顔を持つに至ったのか振り返る中村の言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が綴る。

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 中村敦夫がこれまで演じてきた役柄は代表作『木枯し紋次郎』をはじめ、体制のカウンターに身をおく人物が多い。それは自身へのイメージもまた同じで、俳優、キャスター、政治家として、体制に鋭い目線を投げかけてきた。

 中村は1984年、情報番組『地球発22時』(毎日放送)でニュースキャスターに転身している。ニュース原稿を読むだけの「アナウンサー」ではない、自分で取材をして自分の意見を述べる「キャスター」の草分け的な存在となった。

「僕はマニュアル的に同じことを続けるのが嫌なんです。驚きのあるものを提供できるのが、僕らサービス業だと思う。『安全だからやる』というのは、せっかく時間を割いてくれるお客さんに失礼な話ですよ。

 当時は俳優として一応は全国区になって主演番組もやって、そうすると自分自身がよどんでいくのが分かるんですよ。パターンばかり要求されますから。それで『死ぬまでずっとこれを続けるのか』と思うとゾッとしちゃうんです。生活保証はあっても、人生としては面白くない。それで、脱出したくなるんです。当時は歌とドラマから情報番組へテレビの主流が移る時代だったので、今度はその先端を走らせてもらいました。

 ところで、人間というのは誰もが皆、演技者だと僕は思います。社会を形成するためには、誰にでも役割がある。それを果たすために、演技をしているんです。社会から台本を与えられてね。『職業的身振り』と呼んでいますが、その職業にふさわしい言葉遣いとか、身振りとか、雰囲気を考えて演じて毎日を過ごしているわけです。

 キャスターをする時も服の選び方とか『キャスターを演じる』部分はありました。政治家となると、ほとんど演技ですよ。街頭演説でも、ここは声を大きくする、ここは笑わせる、ここは相手を攻撃する……と細工しなければ、訴求力は生まれません」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※中村敦夫氏は朗読劇『山頭火物語』を8月30日~9月1日(日比谷図書文化館 地下コンベンション・ホール)、11月2日・3日(岩波書店アネックスビル3F・岩波書店セミナールーム)で公演予定。入場は予約制。

※週刊ポスト2013年8月16・23日号

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