教育費名目で退職まで会社が毎月10万円天引き 取り戻せるか

NEWSポストセブン / 2013年8月16日 16時0分

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「退職まで毎月10万円を天引きされた。不服を申し出たい」という質問が寄せられた。

【質問】
 会社に退職を申し出ると引き継ぎもあるので、3か月後にしてほしいといわれたのですが、その間、毎月10万円ほど給料から引かれていました。会社の言い分としては、私を一人前にするためにコストがかかっているのだから、当然の措置だといわれました。納得できません。どうすればよいですか。

【回答】
 退職申し出が、なりふり構わぬ強固な意思表明であれば、使用者の意向に拘らず2週間経過後に雇用関係を終了できます。しかし、普通の退職申し出は、雇用契約の合意解除の申し込みと解され、使用者の承諾で契約終了となります。ご質問の場合、3か月後に契約終了の合意ができたことになり、労働条件の変更はないので、給料の額は従来通りです。会社は約束の給与を支払う義務があります。

 会社の社員教育は、会社の利益のために、その業務の一環として実施されるのが普通です。教える内容は会社の業務の遂行に役立つことで、従業員個人の資質を高めることを直接の目的としていません。

 社員は、業務命令で受講等をさせられるので、教育を受けること自体が会社の業務です。会社の業務を遂行する費用を従業員が負担する道理がないことは自明です。したがって、会社側の教育コストの主張は間違いです。

 仮に入社時に、退職に際して、教育コストを返すというような約束をしていたとしても、労働者の退職の自由を奪いかねない一種の違約罰であり、労働基準法に違反して無効です。業務と無関係で任意に留学等する場合の費用支出や資格試験の希望者に特別講習をする費用がかかる場合、会社からの貸し付けとして、一定の条件下で退職に際し返還させる合意が有効だとした例があります。しかしながら、ご質問の場合には到底、当てはまりません。

 使用者には給料を全額支払う義務があり、この義務に違反すると使用者は30万円以下の罰金で処罰されます。そこで労働基準監督署に相談するのがよいと思います。もっとも、仮に一旦退職扱いになり、引き継ぎ目的で新たに短期間雇用されたのであれば、新規の雇用条件で労働契約を締結したことになりますから注意してください。

※週刊ポスト2013年8月16・23日号

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