地元一部で「カマヤクザ」と呼ばれていたストーカーの公判記

NEWSポストセブン / 2013年9月6日 16時0分

 2013年5月から6月にかけて、あるストーカー殺人の裁判があった。同性愛者の被告人は、交際相手へのストーカーと放火、3名の殺害で起訴されていた。愛情がどうして殺人事件にまで発展してしまうのか。法廷で聞いた現場の言葉を、作家の山藤章一郎氏が報告する。

 * * *
 手錠に、腰縄の被告人・浅山克己(47)が入廷してきた。短髪、土気色の顔、猫背。目の前に坐る3人の検察官を、上目遣いで窺う。検察官たちは、メガネの年上、快活そうな長身の若いの、体にぴったりの黒スーツの女性らである。若い堀越健二検察官が、要点を陳べる。

「被告人は同性愛者で交際相手2名に対するストーカーおよび2件の放火、3名の殺害で起訴された」

 以下、整理する。

一、2010年10月──被告人・浅山克己は桐野恭一(仮名・43歳)に恋慕を募らせてつきまとい、脅迫を繰り返し、名古屋から山形県の実家まで追いかけて、恭一の父母を殺害、放火した。

二、山形での放火よりほぼ1年後の2011年11月──恭一のあとで愛し合った大原義男(仮名・45歳)に東京に逃げられた。

 隠れているに違いないと考えた江東区の実家に不法侵入し、実母を殺害放火した。

 一と二、〈山形〉も〈東京〉も犯行への同じ顛末をたどっている。ホモサイトなどで知り合う→半同居する→相手が親許に逃げる→暴力的に追いかける→親を殺す。今年2013年5月6月の2か月、初公判から判決まで全11回の裁判だった。以下、故郷の山形に逃げ、父母を殺された桐野恭一の証言を中心に、事件を解く。

 法廷は、終始張りつめていた。三面に折り畳める青地の布パーティションに遮られ、〈元・愛し合った〉互いの顔は見えない。

「そこにいて声を聴かれている。ついたてが倒れたらと、怖いです」

 恭一の、か細く、おびえた震え声だけが法廷に這う。パーティションの端からも、風貌は覗けない。

 実家は某・伝統工芸を営むが、先行きの見込みは薄い。しかも自身は、ゲイで、女と結婚する気はない。親にカミングアウトせず、大学卒業後、山形市内、ついで名古屋に出て、飲食の仕事に就いた。職場でゲイがバレぬよういつも身をちぢこませていた。ある日、スーパー銭湯に行った。

「そのお風呂で友人に会い〈ウォンテッド〉という同性愛者のメンズネットサイトの話で盛り上がりました。そこに浅山が加わって意気投合し、その日のうちに肉体関係を持ちました」

 恭一のホモサイトのキャラ名は〈虎之助〉。

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