高齢者による犯罪が増加 理由に「絆欠ける社会的な孤立」も
NEWSポストセブン / 2013年10月2日 16時0分
今の日本に顕著な傾向として、高齢者による犯罪が増えているという。65才以上の高齢犯罪者は、1992年の統計と比べると、2012年の暴行罪は約58倍、傷害罪は10倍に増加している。殺人を犯す高齢者もこの20年間で増加しており、2012年の検挙者数は148人に達する。その理由のひとつが孤立だというのだ。
犯罪に詳しい慶応大学法学部の太田達也教授が言う。
「一般的には経済格差や福祉の遅れが主要な要因とされますが、私はそれだけでなく“社会的な孤立”が犯罪を助長していると思います。実際に調査をすると、犯罪を犯す高齢者は独居世帯や夫婦だけの世帯が多く、家族の支援や絆に欠けている人が多かった。こうした孤立が高齢者を犯罪に向かわせていると考えられます」
実はどの世代でも、この“喪失感”が犯罪を助長している。
2008年6月に起きた「秋葉原通り魔事件」(7人死亡、10人負傷)も、この“喪失感”によって引き起こされている。事件を起こした加藤智大被告(30才)は、ネット上のトラブルから掲示板での交流が断たれ、さらに仕事と職場の友人を失うことで社会的な絆を断ち切られると思いこんだ。事件後、手記で次のように心情を吐露している。
〈孤立とは、社会との接点を失う、社会的な死のことです〉(加藤智大著、批評社『解』より引用)
そして、心の通い合わない母親の存在が事件の遠因であるとも綴る。母親への口答えすら許されなかった彼は、他者とのトラブル時に、相談や口喧嘩という当たり前の解決策さえ持ち合わせていなかったことが窺える。加藤被告はこうも綴る。
〈もし私が人に相談していたなら、事件は回避された可能性があります〉(同引用)
他人や地域との交流が人の心を育て、人殺しを瀬戸際で止める“最後のブレーキ”となると東京工業大学名誉教授(犯罪精神医学)の影山任佐名誉教授は主張する。
「人間関係が希薄だとちょっとした刺激が引き金になり、重大犯罪にいたります。身の回りに支えてくれる人間関係があり、将来に向けての人生行路がしっかりしていれば、殺人事件は起きない。ギリギリのところで殺人を防ぐことができるのです」
わが身に降りかかるかもしれない殺人事件をいかに防ぐのか。それはあなたの周囲にもいる、殺人予備軍の人物を孤立させないことにある。しかし、一方でそうした危ない人物との接触を避けることもリスク回避のうえで欠かせない。相矛盾する極めて難しい対応が、今、私たちに突きつけられている。
※女性セブン2013年10月10日号
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
相模原殺傷、被告側が無罪主張へ 「心神喪失」、1月に初公判
共同通信 / 2019年12月14日 6時0分
-
知人殺害の男に懲役25年、滋賀 草津の切断遺体事件、大津地裁
共同通信 / 2019年12月6日 17時49分
-
【熊谷6人殺害】死刑判決破棄して無期懲役 ペルー人被告の想像を絶する「家庭環境」……父はDV男、兄は25人殺人犯
文春オンライン / 2019年12月5日 21時50分
-
「市民感覚の軽視」 裁判員の死刑判断破棄6件目 熊谷6人殺害で無期懲役
産経ニュース / 2019年12月5日 19時50分
-
新幹線殺傷公判 遺族の供述調書朗読「罪にふさわしい刑罰を」
産経ニュース / 2019年12月5日 18時40分
ランキング
-
1いばらき大使の報酬だけで6000万円超 ペテン食専門家のうさんくささ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2019年12月13日 9時26分
-
2準強制性交等罪控訴審 19歳娘を精神鑑定の医師「精神的、心理的に抵抗できず」 名古屋高裁
毎日新聞 / 2019年12月13日 18時19分
-
3高3運転、生徒4人死傷、埼玉 乗用車横転し大破
共同通信 / 2019年12月13日 22時1分
-
4野口健 グレタさん皮肉で賛否…環境活動家委縮させるの声も
WEB女性自身 / 2019年12月13日 23時16分
-
5弁護側は即日控訴 妻子3人殺害の元福岡県警警察官に死刑判決
毎日新聞 / 2019年12月13日 20時26分