ほうれん草は薄い色と濃い色どちらがいい 他、野菜選び指南書

NEWSポストセブン / 2013年12月3日 16時0分

【書籍紹介】『間違いだらけの野菜選び』/内田悟/角川oneテーマ21/840円

【評者】鳥海美奈子(ジャーナリスト)

 有名ホテルや百貨店による食材の「虚偽表示」が続々と発覚した。またか。不信とともに失望感を抱いた人も多かったろう。

 本書は、野菜に潜む「常識と嘘」を明解に提示する。著者は、東京でレストラン専門の青果店「築地御厨」を営む。

 例えば、ここに緑の薄いほうれん草と濃いほうれん草がある。私たちは得てして真緑色の野菜のほうが鮮度がよく栄養価も高いと信じ込んでいる。しかし乾燥や紫外線、病原菌から身を守るために本来、緑黄色野菜は「クチクラ層」という膜を張る。ゆえに、薄い緑色になる。昨今の野菜は化学肥料や農薬によりその膜が破壊されているのだ、と著者は言う。

 さらには「虫の食った野菜は安心」という常識も間違いだという。虫は実は肥料につく。自然界にとって異物の肥料分を虫が食べることで、本来の野菜の姿に戻そうとしている。何より大量の肥料により硝酸性窒素をたっぷり蓄えた野菜は、健康にいいどころかがんの発症を誘発すると問題視されている、というから驚く。

 目から鱗は、それだけに限らない。本書を読むと、有機野菜の安全神話もがらがらと崩壊していく。いわく、牛糞や鶏糞を使った有機肥料は、化学肥料よりも硝酸性窒素が多くなりがち。ましてや抗生物質や遺伝子組み換え作物を餌とした動物であれば、どうしてその野菜を本物といえるだろう?

 結果、著者が行き着いたのは無肥料、無農薬により自然栽培された野菜だった。野山の木々を見れば一目瞭然。何もしなくても毎年芽を吹き、花を咲かせ、実をつける。健全な土壌であれば農薬も肥料も必要ない。著者の気づきは、長女がアトピー性皮膚炎を発症したことによる。実体験に支えられた説には重みがある。

 それでも自然栽培の野菜は高価であり、入手しづらいのもまた事実。が、著者が示す解決策はいたってシンプルだ。すなわち、「旬の野菜を選ぶ」こと。肥料や農薬を与えられても、旬の野菜は不必要な成分を自力で掃き出すだけの生命力を持つからだ。

 私たちの周囲は、いつだって曖昧な情報に満ちている。けれど消費者が正しい知識を持てば、それは「偽装」野菜の淘汰に繋がる。いうまでもなく体を育むのは食。野菜をどう選ぶか。それは私たちがどう生きるか、どう命を繋ぐかの表明ともいえるのである。

※女性セブン2013年12月12日号

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