中国が初の防空識別圏 これまで能力不足で設定できなかった

NEWSポストセブン / 2013年12月1日 7時0分

 日本では中国が設置を発表した防空識別圏(ADIZ)により、いまにも軍事衝突が起きるかのような騒ぎになっているが、中国のADIZ設定の狙いなどについて、中国問題に詳しいジャーナリスト、相馬勝氏が解説する。

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 まず、確認すべきは中国にとって、ADIZはこれが初めてだということだ。つまり、沖縄県尖閣諸島を含む東シナ海域の上空しか、中国のADIZはない。これは、領土が広大な中国にとって、極めて不自然だ。

 中国の国境線は合計2万2800キロに達し、4300キロの国境線を接するロシアを含めて16か国に達している。これは世界各国の中で、中国が最も多い。さらに、海岸線も約1万8000キロもあり、日本、台湾、韓国、北朝鮮や東南アジア諸国との海を隔てて接している。

 これだけの広大な国なのに、いままでADIZを設定していなかったのが不思議といえば不思議だ。

 これは、中国の軍隊が陸軍主体だったことが大きな理由の一つだろう。これまで中国にとって軍事的に脅威だったのは旧ソ連で、主に陸からの攻撃を防ぐことが中国の国防の主体だった。

 さらに、このほかの大きな理由として、中国が海軍や空軍を整備したのは1990年代からであり、空軍にいたってはほとんど皆無に等しく、ようやく21世紀に入ってから最新式の戦闘機を配備するようになったことがあげられる。それ以前は、ソ連製の旧式のミグが主力で、完全に時代遅れで、北朝鮮とほぼ変わらない状況だった。

 このため、中国軍が当時、ADIZを設定したとしても、肝心の空軍力がお粗末な状態だったため、他の国の戦闘機がADIZ内に入ってきても、ほとんど防ぐ術がなく、国際社会から蔑みの目で見られる可能性もあった。このため、ADIZを設定したくても、設定できなかったというのが実情だったのではないか。

 ところが、昨年来、中国側は尖閣諸島を「自国領」と強烈に主張したこともあって、空軍機を頻繁に尖閣諸島周辺に飛来させた。それによって、日本の空軍自衛隊が頻繁にスクランブルをかけたことで、中国の国民にもADIZの存在が広く知られることになり、中国軍も日本への対抗上、ADIZを設定せざるを得なくなったのだ。

 とはいえ、11月中旬まで中国共産党の重要な会議である3中総会が開催されていたため、軍トップの習近平主席ら最高指導部が忙しく、設置発表のタイミングが3中総会終了、1週間後の11月22日の夜になったというわけだ。
 
 しかも、設定した2時間後の23日午後には米軍機がADIZを悠々と飛行したにもかかわらず、中国側はスクランブルをかけられなかった。「中国軍は張り子の虎か」と中国の国防省の記者会見で、外人記者が揶揄しても、中国側は反論すらできなかったことから考えると、尖閣問題で、これだけ米軍が前面に出てくることを予想できなかったと言わざるを得ない。

 ただ、今後も同じようにスクランブルをかけられない状況を繰り返せば、中国側のメンツ丸つぶれになるため、危険を承知でスクランブルをかけることも考えられる。その際、飛行技量で劣る中国側が偶発的に戦闘状態を引き起こし、どちらかが撃墜されるとの不測の事態は警戒しなければならないだろう。

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