『仁義なき戦い』は現役のヤクザが所作を教えに撮影所に来た

NEWSポストセブン / 2013年12月7日 7時0分

 東宝ニューフェイスだった俳優の伊吹吾郎は、1969年に「無用ノ介」で主役に抜擢されるまで時代劇は未経験だった。その後、映画では東映と契約し数多くのヤクザ映画・時代劇に出演した伊吹が語る『仁義なき戦い』に出演したときの体験談を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。

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 1969年に日本テレビの時代劇シリーズ『無用ノ介』で主役に抜擢された伊吹吾郎は、その後は新国劇に所属している。新国劇とは『国定忠治』や長谷川伸原作の股旅モノを中心とした時代劇を得意としてきた劇団で、辰巳柳太郎・島田正吾の二大ベテラン俳優が率いていた。

 新国劇の舞台に立つのと同時期に、伊吹は映画では東映と契約。『仁義なき戦い』(深作欣二監督)を始め、幾多のヤクザ映画・時代劇に出演している。

「本番を終えると、深作監督はとりあえず『オッケー』と言うんですよ。なので、『ああ、これでよかったんだ』と思うんですが、すぐに『ああ、ちょっと待ってくれ。今の微妙に違うから、もう一回いこう』と。最初からダメ出しされるわけではないので、こちらも悪い気はしない。役者の使い方が上手い監督でした。

 当時は現役のヤクザが所作を教えに撮影所に来ていました。彼らが食堂でコーヒーを飲んだりしている仕草を見ていると、芝居の参考になることは多かったですね。人と話す時は、あまり面と向かわないで斜に構えて睨むとか、机をずっとトントンと叩き続けて落ち着かないとか。そうすると、ひと癖ありそうな人間の雰囲気になるんですよ。

 共演が多かったのは、鶴田浩二さんです。あの人には島田先生のおっしゃっていた『品格』があった。『映画俳優』って感じがしました。芝居だけでなく、普段の身のこなしも、下品さというのがあの人の雰囲気の中から一切感じられない。特有の目線の角度とかに品を感じました。

 でも、口頭で何かをおっしゃる方ではなかった。それは僕が感じることですから。学ぶっていうのは、真似ると一緒なんです。尊敬しながら真似る、盗むというのが学ぶってことだと思います。全てはそこから始まる」(文中敬称略)

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。

※週刊ポスト2013年12月13日号

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