ウイグル族の携帯監視、24時間所在確認 テロに怯える北京

NEWSポストセブン / 2013年12月27日 16時0分

「わが国は未曾有の危機に見舞われている。内にはウイグル族のテロリストあり、外にはアメリカを中心とする社会主義体制転覆を図る敵対勢力だ。彼らは新疆やチベットの分離・独立主義者を裏で操っているのだ」

 習近平・国家主席が10月29日の中国共産党政治局会議で語った言葉だ。前日の28日、北京中心部の天安門広場前で、新疆ウイグル自治区在住の3人が乗っていたとされるSUV車の自爆テロが起きたことを強く意識したものだ。ジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。

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 香港紙「明報」は29日の政治局会議について、「新疆ウイグル自治区トップの張春賢・政治局員に非難が集中した」と報じている。
 
 張氏は事件1週間前に開かれた同自治区の幹部会議で、「少数民族問題を解決するには、まず経済の持続的な成長が必要であり、これが自治区すべての問題解決のカギとなる。また、教育の意義を深く理解させるとともに、少数民族の就業率を向上させ、民生を改善させることが重要だ」などと述べて、従来の抑圧政策よりも少数民族を含む民生安定こそ必要だと強調した。

 それから1週間も経たないうちに、あろうことか共産党政権のシンボルである天安門の前でテロが発生し、死傷者45人を出す惨事となった。当日は事件現場から200mも離れていない人民大会堂で、習氏ら政治局常務委員7人が出席して第11回中国女性全国代表大会が開かれており、まかり間違えば党幹部が犠牲になる可能性もあった。

 それだけに、政治局会議では「あなたの政策は矛盾を拡大させるだけで根本的な問題解決にはほど遠い。力には力で当たるべきだ」などの意見が続出し、張氏の少数民族政策が槍玉にあがった。張氏の辞任を求める声も出た。

 それを遮るように発言したのが冒頭の習近平である。北京の共産党筋によると、習近平は「張同志1人に責任があるわけではない。中央指導部も少数民族対策を見直す時がきたのかもしれない」と指摘。そしてこう続けたという。

「まず自爆テロに関わった『テロリスト集団』を速やかに全員逮捕し、組織を壊滅に追い込む。『目には目を、歯には歯を』だ。自治区では当面、軍による厳戒態勢を継続。同時に、自治区の経済発展を成し遂げ、少数民族の生活を安定させるなど民生を向上させる。そのために中央指導部が経済支援を行なう。これはチベット自治区も同じだ」

 この「重要指示」に基づき、同自治区の軍トップの彭勇・新疆軍区政治委員が更迭され、軍の引き締めが行なわれるとともに、同自治区では即日、警戒態勢を通常のレベル3からレベル1に上げて、軍や警察、武警が24時間態勢で巡視する措置がとられた。過去に警官隊との衝突などの騒乱に関わったウイグル族住民はすべて近況がチェックされ、警官による尋問がなされた。さらに、ウイグル族市民の携帯電話の盗聴が強化され、インターネット上でも少数民族の決起を促す書き込みはすべて消去されている。

 自治区では11月17日まで2日間にわたって幹部会議が開催され、張氏は「各レベルの党組織は断固として社会の安定を確保せよ」と指示し、騒乱を武力で抑え込む方針を明らかにした。これは張氏が従来の経済重視政策を放棄したことを意味している。

 厳戒態勢は同自治区にとどまらない。北京でも郭金龍・党委書記の指示で市内全域のウイグル族の携帯電話がチェックされ、24時間所在が確認される措置がとられた。さらに、郭声●(=王へんに昆)・公安相が11月4日夜、事件現場を抜き打ちで視察し、「テロ対策は厳しく複雑だ。死角や盲点を残さず、危険を最大限に取り除かなければならない」と強調。北京はテロに怯える街と化した。

※SAPIO2014年1月号

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