牛丼戦線異状あり「牛肉信仰崩壊が客数減の原因」と識者指摘

NEWSポストセブン / 2013年12月17日 7時0分

 2000年以降、度重なる値下げ合戦で顧客を囲い込んできた牛丼チェーン。現在、「吉野家」と「松屋」の280円(並盛り)が標準価格になっているが、「すき家」が12月20日から期間限定で240円に値下げすると発表したことで、業界内に激震が走っている。

「240円という最安値は、もはや他社が追随できないギリギリの価格。牛丼単品の儲けは出なくてもいいという捨て身の作戦を取ったのだろうが、逆に牛丼1杯の値段はその程度のレベルだと売る側が認めてしまったようなもの」

 こう話すのは、ファストフード業界のコンサルタント。確かに、すき家を展開するゼンショーホールディングスの台所事情をみると、「なか卯」を含めた牛丼店の客数減に歯止めがかからず、2014年3月期には「はま寿司」など寿司部門の営業利益が牛丼部門を追い抜く見込みだという。

 最大手のすき家をもってしても、外食の主役は牛丼ではなくなっているのだ。さらに、「これまでの“牛肉信仰”が崩れ去っている」と指摘するのは、外食ジャーナリストの中村芳平氏である。

「TPP(環太平洋経済連携協定)を先取りする形で、米国産や豪州産牛肉の輸入が拡大し、食品スーパーに行けば大型のステーキ肉が安く買えるようになりました。国産牛でも300g~500gクラスが閉店間際に行けば500円以内で投げ売りされている。

 これだけ家庭でも良質な牛肉を食べる習慣が普通になってきたため、牛丼やハンバーガーのブランド価値が大きく毀損されてしまったのです」(中村氏)

 牛肉をめぐる外食業界の戦いは、牛丼に使われる細切れの部位から、塊肉そのものに移っている。それは、ロイヤルホストのステーキが売れたり、ペッパーランチが銀座に立ち食いのステーキ店をオープンさせて話題を呼んだりしているのを見ても分かる。

 では、牛丼チェーンはいかにして生き残っていくのか。

 吉野家では女性客を狙った「小盛り丼」や、家族連れを呼び込みたいと卓上コンロで温めながら食べる「牛すき鍋膳」など、あの手この手のメニューで巻き返しを図っている。

 だが、そんな吉野家の新機軸にさえ苦言を呈する声もある。

「吉野家がゆっくり食べられるメニューを出しているのは、会社帰りのサラリーマンの“チョイ飲み需要”も狙い、ビールを注文してもらって客単価を上げようという戦略がミエミエです。

 例えば、中華食堂の『日高屋』はキリンの生ビールを安価で提供し、客はまず餃子をつまみに生ビールを1杯、それから食事をする人が増えたために客単価が上がって業績は絶好調。吉野家もそれと同じようなスタイルに変貌させたいと思っているのかもしれません。

 しかし、そんなファストフード業界の枠を超えたオペレーションはいつか破綻します。そもそもビールをゆっくり飲んで食事をするような店舗設計になっていませんし、店が混んでいる時間帯は客の回転率が悪く、客単価のアップでどこまで補えるのかは疑問です」(中村氏)

 吉野家の業績もすき家同様、苦しさを増している。今期の連結営業利益は対前年比15%減の16億円となる見込みで、やはり「はなまる(うどん)」など他業態に頼らざるを得ない状況だ。

 市場調査会社の富士経済によると、国内の牛丼市場は好況感も相まって2013年は前年比106.1%となる3702億円、2014年も3909億円と伸びる予想が出ている。しかし、牛丼チェーン大手が揃って誤算続きで迷走するようでは、日々進化を遂げるコンビニなどにますます市場を侵食されかねない。

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