鉄道発達と反比例し演歌衰退 リニア開通で演歌滅亡の危惧も

NEWSポストセブン / 2013年12月28日 7時0分

<国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国であった>

 ノーベル賞作家・川端康成も『雪国』で綴ったように、鉄道は、日本の四季折々を肌で感じられる乗り物だった。明治学院大学教授で、鉄道事業に詳しい原武史さんはいう。

「例えば、北海道で5月に函館本線に乗れば、桜が咲き、春紅葉も見られ、その向こうには、まだ雪の残る駒ケ岳や羊蹄山が眺められる。そんな四季折々の自然をダイレクトに味わえるのが鉄道の魅力なんです」(原さん・以下「」内同)

 だが、1964年に開通した東海道新幹線を皮切りに、山陽、東北と日本各地で新幹線が開通。現在、交通インフラは50年前と比べて、格段に便利になっている。

 原さんは、この便利さこそが、演歌を衰退させたと指摘する。例えば、石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』(作詞・阿久悠)。別れを決意した女がひとり、上野から夜行列車に乗り、吹雪の中、連絡船で北海道を目指す歌詞だ。

 発売は1977年で、もちろん東北新幹線はまだ開通していない。上野から青森まで12時間半。そこから連絡船で津軽海峡を渡ることさらに4時間。函館まで実に16時間以上を要する長旅だった。

「そんな不便な時代だったからこそ、多くの人があの歌に共感しました。でも今は、鉄道連絡船が廃止され、ほとんどの人が飛行機を利用するようになった。その感覚しか知らなければ、あの歌の良さはわかりません」

 歌詞に登場する「海鳴り」という言葉は、凍てつき荒れ狂う津軽海峡の冬と主人公の心象を想起させ、続く「こごえそうな鴎」に、聴く者は、愛する人と別れ、寂しさと哀しみに震える自分自身を重ね合わせる。

 車窓から流れる風景、そこに横たわる時間と浮かんでは消える感慨──それらが一体となってあの歌の世界観を醸成しているのだ。

 だからこそ、原さんは、交通インフラの発達と反比例して、ますます演歌が衰退するのではないかと危惧している。

「十数年後には、リニア新幹線が登場する。品川~名古屋間の8割以上はトンネルで、景色も見えない。リニアが開通したら、演歌は滅亡してしまうかもしれません」

 2013年12月20日には、『津軽海峡・冬景色』に登場する上野・青森間の寝台特急の廃止が決まった。日本人の情緒を育んできた古き良き昭和の思い出が、またひとつ消える。

※女性セブン2014年1月9日・16日号

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