蟹江敬三 「役は魂を入れ、『作る』のではなく『なる』もの」

NEWSポストセブン / 2014年2月5日 7時0分

 個性派俳優として広く知られる蟹江敬三が語った『役作り』という言葉に感じる違和感を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。

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 蟹江敬三は名脇役として数々のテレビドラマを支えている。中でも、刑事ドラマや時代劇などで相手の独白を聞く「受けの芝居」をする際の情感あふれる表情は絶品で、そこに蟹江がいるだけで感動的な名シーンになってしまう。こうした場合、演じ過ぎると鬱陶しく映るし、演じないと下手に映る。そのバランスが難しいのだが、蟹江の場合はそこが絶妙だ。

「たとえば僕が刑事役で犯人の独白を聞いている場合、その刑事の犯人への感情をきちんと理解していれば、自然な対応としての表情が生まれていくと思います。ですから、まずは相手のセリフをよく聞くということですよ。そこは、基本中の基本です。自分の反応なり、衝動なりは、相手の言葉を聞かないことには出てきませんから。

 演じる上で一番大事にしているのは、衝動です。人間が生きるってことは、心の衝動の連続だと思います。衝動のない演技はありえない。そのためには、役に魂を入れ『役になる』しかないんじゃないですかね。

『役作り』という言葉は、どうもピンと来ないんです。役は『作る』ものではなく『なる』ものだと思います。最近は『なりきった』と思う瞬間はあまりないですが、舞台をやっている頃はそういう瞬間を感じたことはありました。そういう瞬間が、俳優を続けさせる魔力みたいなものなのでしょう」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。

※週刊ポスト2014年2月7日号

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