機械と対決をする屋敷伸之九段 人間が将棋を指す意味を語る

NEWSポストセブン / 2014年2月13日 16時0分

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将棋の屋敷伸之・九段

 技術の進歩とともに「人間の仕事」は機械に奪われている。ともすれば人間の存在価値にさえ疑問が生じる現代にあって、最も複雑で機械には不向きとされてきた将棋の世界でも昨年の「第2回将棋電王戦」で現役のプロ棋士が初めてコンピューターソフトに敗れた。「人間vs機械」の戦いでリベンジを目指すプロ棋士側の大将格として、今年3月から始まる電王戦に登場するのが屋敷伸之・九段だ。同氏は「機械が人を凌駕する時代」をどう見ているのか。

──昨年の「電王戦」はプロ棋士側が1勝3敗1分で負け越すという衝撃的な結果となった。今年、敢えて参戦する理由は?
 
屋敷:前回の電王戦最終局の解説をさせていただいた時に、「GPS将棋」がほぼ完璧な指し回しで三浦弘行・九段(当時八段)を破りました。GPS将棋は前年の世界コンピューター将棋選手権の覇者で、東大駒場キャンパスにある約670台のマシンをつないで計算しています。どんな将棋を指すのか注目していたところ、これがとんでもなく強かった。自分がソフトと戦ったらどうなるか、ぜひやってみたいと思いました。
 
 加えて電王戦が将棋の新しいファン層の拡大につながる期待もあります。対局の模様がニコニコ動画で生中継され、前回は延べ200万人以上が視聴しました。これまでの将棋界にはこうしたエンタテインメント性を求めるイベントはほとんどありませんでした。対局中にどちらが優勢かをリアルタイムで数値化して表示するなど、仕掛けも面白いと感じています。
 
──コンピューターの強さはどこにあるのか。
 
屋敷:人間同士の戦いでは、仕草や表情といった「息づかい」から相手の心理を感じ取れます。悪手を指した後はどうしても落ち着きがない所作になる。こちらは指し手そのものだけでなく、そうした仕草まで見た上で悪手をどう冷静に咎めるか、といったことを考えるわけです。
 
 ソフト相手ではそれができませんから、普段の将棋とはかなり異質な戦いになってしまいます。また終盤に入り、詰むか詰まないかという「答え」がある局面ではソフトはほぼ間違いません。人間はプロであっても時間に追われて焦ったり、動揺から悪手を指してしまったりしますが、機械は常に冷静です。

──「ソフトのほうがプロ棋士より強い」という時代がそこまで迫ってきた中で、それでも人間が将棋を指す意味とは。
 
屋敷:僕は大きな意味があると考えたいですね。そう思う理由のひとつはプロ棋士の人間であるがゆえの魅力です。僕自身、プロになったのは将棋が好きだったことはもちろんですが、大先輩である先生方に憧れを持っていたという理由が大きい。当時は大山康晴先生(十五世名人)や中原誠先生が、それぞれの棋風や強烈な個性で魅力的な将棋を作り出していました。
 
 将棋まつりのようなイベントではそうした先生方による多面指しの指導対局があったりして、ますます憧れが強くなった。将棋が広く普及してきたのは、そうした人を媒介した活動があったからだと思いますし、それは機械には代替できない役割ではないでしょうか。

※SAPIO2014年3月号

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