老父と息子が100万ドルのため米田舎を旅するロードムービー

NEWSポストセブン / 2014年3月4日 16時0分

【映画評】アレクサンダー・ペイン監督「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」

【評者】川本三郎

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 子供にとって老いてゆく親の姿を見るのは悲しい。子供の頃は大きく見えた親が次第に小さく見えてくる。とくに父親の場合は、その衰えが切ない。

 ジャック・ニコルソンが定年退職したあと、妻に先立たれ、一人暮しをすることになる物語「アバウト・シュミット」(2002年)のアレクサンダー・ペイン監督の新作「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」は、老いた父親と息子が旅をする物語。

 モンタナ州の小さな町。父親(名傍役ブルース・ダーン)は自動車の修理工場を営んでいたが、すでに引退して久しい。大酒飲みで、少し認知症になっているようだ。美容院を開いていた母親(ジューン・スキッブ)のほうはまだ元気で、二人のあいだはうまくゆかなくなっている。

 父親のところに「百万ドル当りました」という手紙が来る。安っぽい商品PRの手なのだが、父親は本気にしてしまい、賞金を取りにネブラスカまでゆくといって聞かない。

 仕方なく、町のオーディオショップで働いている息子(ウィル・フォーテ)が父親の旅に付添うことになる。アメリカ映画でおなじみのロードムービーになっている。

 通り過ぎる町は、アメリカの田舎町。日本と同じで過疎が進んでいるらしく、どこも寂しい。人通りの少ない通り。商店は店を閉じている。町にいるのは老人ばかり(この映画、若い女性がほとんど出て来ない!)。たまにいる若者は不況のあおりで職がない。

 父親は生家に立寄る。廃屋になっている。父親は寂しく呟く。「枯木と雑草ばかりだ」。

 アレクサンダー・ペイン監督は中西部のネブラスカ州の出身(一九六一年生まれ)。故郷の近くには実際にこんな寂しいアメリカが多くなっているのだろう。

 老いた夫のことを心配した母親が旅に加わる。親子三人が、かつて暮した町に行く。レストランに入る。ここも老人ばかり。

 父親は大酒飲みだったせいか、親戚にも、かつての友人にも歓待されない。ところが「百万ドルの賞金が当った」という噂が広まると急に彼らの態度が変わり、分け前を寄こせと言ってくる。

 それを見た息子は自分が父親を守らなければと思うようになる。百万ドルもらったらトラックを一台買いたいという父親のささやかな夢が、息子の、そして観客の胸を打つ。

※SAPIO2014年3月号

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