秋のプーチン大統領訪日 北方領土問題の行方を佐藤優氏解説

NEWSポストセブン / 2014年4月4日 7時0分

 欧米各国の首脳がソチ五輪の開会式を欠席するなか、安倍首相は開会式に出席し、プーチン氏は安倍氏を厚遇した。秋に予定されているプーチン氏訪日に向けて北方領土問題の進展が期待されるが、領土問題解決はあるのだろうか? 作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が解説する。

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 2月8日、ロシアのソチで安倍晋三首相とプーチン大統領が会談した。会談の冒頭、マスメディアの前でプーチン大統領は、一昨年、秋田県知事が贈った秋田犬の「ユメ」を連れて現われた。これはプーチン大統領が日本に対する好感を持っていることを報道させるための演出だ。

 安倍首相とプーチン大統領の会談は、14時10分から約1時間、少人数で行なわれ、その後は車で移動し、15時25分頃から16時30分頃まで昼食会が行なわれた(時間はすべて現地時間、日本時間はプラス5時間)。

 ソチ冬季五輪にあわせて行なわれた非公式首脳会談に2時間以上もプーチンが時間を割いたのは異例のことだ。前号で解説した通り米国、英国、ドイツ、フランスなど西側主要国の首脳が、同性愛宣伝禁止法などロシアにおける人権問題に対する懸念からオリンピック開会式を欠席した。そうした中で安倍首相が出席したことをプーチン大統領が高く評価していることを可視化するためにこのような厚遇をしたのだ。

 会談の実質的な成果もあった。今後の政治対話についてはまず、今秋のプーチン大統領の公式訪日に合意した。ロシア大統領府筋によれば、訪日は10月か11月に行なわれる。それに加え、安倍首相が、6月にソチで行なわれるG8サミットにおける日露首脳会談を提案したところ、プーチン大統領は「検討する」と答えた。

 その後、外交ルートで調整が行なわれ、2月10日の記者会見で菅義偉内閣官房長官が、首脳会談が実現されると発表した。これで本年中に日露首脳会談が少なくとも3回行なわれることが確実になり、日露の戦略的提携が進んでいることを国際社会に示すことになる。   

 今秋のプーチン大統領訪日は、北方領土交渉の正念場となる。北方領土交渉について、両首脳は慎重な発言に終始しているが、基本的な2つの方向性について合意している。

 第1は、平和条約交渉に関する外務次官級協議(日本側団長は杉山晋輔外務審議官、ロシア側団長はモルグロフ外務次官)で論点を整理し、解決できない部分を首脳間の決断で解決する。第2は、経済協力、安全保障協力を拡大する中で、北方領土問題解決の環境整備を行なう。

 安倍首相は、日本側の交渉スタンスのハードルを下げている。2月7日、ソチに向けて飛び立つ直前、東京の北方領土返還要求全国大会の挨拶で、「明日、プーチン大統領と5回目の首脳会談に臨みます。私は日露関係全体の発展をはかりつつ日露間に残された最大の懸案である北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んで参る決意であります」と述べた。

 安倍首相が「四島」に言及しなかったことをクレムリン(露大統領府)はシグナルと受け止めている。「北方領土問題を最終的に解決し、ロシアとの間で平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んで参る決意」ということは、四島の日本への帰属確認を前提とせずに交渉を行ない、解決の出口を探るという「出口論」を安倍首相がとっていることを強く示唆するものだ。

※SAPIO2014年4月号

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